社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年01月21日

地元には潜在需要がしっかりあった


 先週、女優・市原悦子さんの葬儀が青山葬儀所で行われた。その祭壇は市原さんが観葉植物を好きだったこともあり、ハモノと枝物のグリーンで彩られた、故人を偲んだ祭壇であった。

 寒くなる11月から3月までが、年間の葬儀件数を12ヵ月で割った月平均葬儀数を上回る。その中でも一番多い月が今月1月だ。この平均よりも多い月に、白菊が多く出荷される必要がある。葬儀件数が平均より少ない月に多く出荷されると、在庫がかさみ単価が落ちてしまうのだ。この現象が過去3年に渡って起きていた。今年はそうならないよう、需要に合わせて出荷が行われて欲しい。

 さて、2018年(1月~12月)の都内中央卸売市場花き部の実績が出た。大品目のうち、出荷量が前年より伸びているものが残念ながら無く、全体が微減の結果となった。天候不順と生産者の高齢化問題への対応が上手くいかなかったからだ。さらに、運賃の問題も挙げられよう。作柄があまり良くなかった場合にその商品は安値になってしまう。その際、運賃を吸収出来ない可能性があるから、結局地元に出荷してしまうのだ。一方、このような現状の中で量が少なく単価が上がったのが、ハモノと枝物である。この二つは都内のどの市場でも堅調だった。また、鉢物では観葉植物や多肉等が、需要がしっかりしていて堅調だった。
 
  風邪が治りかけてきた昨日、大森から蒲田にかけて、嘗ては町工場がひしめいていた辺りを散策することにした。メリーチョコレートの本社や、嘗てあった“音響のパイオニア”発祥の近辺では、M&Aで名前が変わったベアリング工場が残っていただけで、後は殆ど住宅地になっていた。
 
  2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田から豊洲までの間には沢山の住宅が建ってきた。大きなマンションもあれば、三階建てのペンシルハウスもある。とにかく、人が増えているのだ。ちょいと足を伸ばして六郷の方まで行っても同様だ。そういえば、ロフトやMUJI、ニトリ、車を持っている人は近隣のイケア等に行っていると聞いた。この移り住んできた人々のライフスタイルに合うような花は何だろうか。小さな子供や家にペットもいる場合があるだろうから、小さな花が必要だろう。また、グリーンといっても、ハンギング等の場所を取らないものや、邪魔にならないスッと伸びたタイプのものも素敵だ。
 
 時代はグリーンに、そして、小さく手軽なものに代わり、それは確実に伸びていく。また、生協のように週に一回、あるいは二週間に一回届けてくれるような花。そんな花なら買い物時間の節約になるし、今後、使っても良いと思う世代が大森の界隈に本当に増えていることがわかった。ただし、家庭内需要において単価を上げるというのはなかなか難しいように感じた。
 
 さあ、今月末の愛妻の日から始まって、節分、フラワーバレンタインデー、桃の節句、国際婦人デー(ミモザの日)、そして、ホワイトデーと、ライフスタイルの中で花を使う日が増えてくる。30代、40代の若い世代に合ったライフスタイルフラワーを花き業界は提案し、これらの記念日を花で演出してもらいたい。
 
投稿者 磯村信夫 16:18