社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年09月06日

国も花き産業を後押ししてくれている


 昨日、いつも行く食品スーパーに秋の花が沢山並んでいたので、思わずあれもこれもと購入してしまった。大きく活ける訳ではないが、洗面台や机の上、キッチンやトイレ等にあると、もう秋だなあと思いながら、物思いに何となくふける気分になってくる。そして食もそうだが、人はやはり文化で“well-being”が増大していることが分かる。

 花き文化の場合、今、コロナ禍で冠婚葬祭が小さくなったり、度重なる緊急事態宣言の発令で結婚式が出来なくなったりしている。一方、家庭需要やサブスクリプション、「会えないので花のプレゼント」等々、そういう需要はしっかりある。しかし、切り花・鉢物園芸まで含め、トータルで見ると出荷量は5%以上減少している。そして、需要動向が変化したので、余ってしまい単価安になる品目と、足りなくて単価高になっている品目に明暗が分かれている。例えば、主にお葬式に使用されている一輪菊は、一定の需要はあるが、もう以前のような量は要らないので相場の乱高下が激しい。平均単価は下がっている。一輪菊をよく使っていた買参人の方々から大田花きの菊担当部署に、「ディスバッド菊に変えたいのですが、生産量はありますか。継続して出てきますか」という声が少なからずある。ディスバッド菊が不足している状態なので、現状は従来の一輪菊を使っている。変化に対応しなければならない一例だ。このような状況の中、農林水産省は2022年度政府予算概算要求で、花き支援対策の予算を21年度当初予算と比べて9000万円増の、8億1800万円を計上した。

 2022年は家庭需要はじめ、新しい需要のスタートだ。お葬式は現在の簡素化のまま移行するだろうが、結婚式は復活するだろう。そして何よりも、いけばな教室やフラワーデザイン教室が復活し、花との生活の需要拡大の礎になってもらえると思う。そこを業界全体ではプロモーションを行っていきたい。また、花き業界内の課題だけでなく、社会全体が環境問題や人権問題を考えていかなければならない時代だ。あらゆる業界で、サプライチェーンの各所で起きたことは、サプライチェーン全体の参加者の責任となる。例えば新疆ウイグル自治区での人権侵害の問題では、問題を無視してコットン製品のサプライチェーンに関わった世界中の企業が批判を受ける。花き業界でも、石油から作ったフィルムで過剰に花をラッピングしている、あるいは、鮮度を保つためと、使い捨てのプラスティック容器を使い水につけて流通させる等は、サステイナブル、SDGsの視点からは、地球環境の改善をしようとする意思のない業界だと言われてしまう。このままでは、消費者からは花を買ってもらえなくなってしまうかもしれない。これは業界全体で一体化して取り組まなければならない課題だ。川上から川下まで、「それは生産者の問題」、「これは市場の問題」、「それは小売の問題」等、自分のところは関係ないということはない。サプライチェーン上の課題は、サプライチェーンに関わる全ての関係者に関わりがあり、責任を共に負うということなのだ。それが消費者に対しての態度である。また、社会に対しての態度である。 

 業界全体が変革期を迎えていることを理解している業界人は多いが、「どのように変えていくか」を明確に意識し、PDCAで回せているところまではまだ到達していない。2022年は、その年にしていきたい。


投稿者 磯村信夫 11:22