社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年04月02日

四つの機能を更に推し進める


 新年度に入り、「何か会社の方針で変わったことは?」との質問があった。「トレンドに合せて変えていくのは取扱商品である花や緑だけです。仕事の根本は変わりません」とお答えしている。

 商流、物流、情報流、資金流。これら四つの機能が卸売市場にはある。今まで、卸売会社は“商流”が無いと、他の三つの流通を引き受けてこなかった。しかし、ネット販売の拡大や、農業競争力強化法案で、生産者や系統農協が実需者に直接販売するようになった中で、四つに卸売市場業務を分けて、買参人や消費者、出荷者に役立つのであれば、どれか一つでも公共インフラとして使って頂きたい。これが、大田花きの取引先に対する取組み姿勢だ。これらの機能を通じて、理念である「花や緑を通じて、人々を幸せにする」を行っていく。

 “花き”とは、観賞用の切花や草木を指すが、切花と同様、鉢物、苗物もこれに当たる。委託販売の場合、大田花きの手数料は一律8%だ。そして、品目によって、形状は大きく異なる。近頃は、段ボール箱に入れて出荷される鉢物もある。また、花きの物流のみ大田花きに頼む出荷者もいる。恐らく、運送問題、運賃問題からだろう。こうなると、弊社の自動搬送機に載る段ボール箱で出荷されているものであれば、鉢物でも50円の荷扱い料、それ以外の規格外のものについては、ケースあたり100円の荷扱い料を設定している。また、大田花きは取引後、鉢物専門市場と違い、鉢物・苗物も切花同様、買参人別に分荷している。それは「花き」だからだ。

 これは希望があるだけで、新卸売市場法が施行されたら出来るかもしれないビジネスの話だが、「あそこに直接出荷していたけれど、支払いが遅いだけでなく、物流費が上がってたまらない。まずは、決済だけお願い出来ないだろうか」という出荷者もいる。決済については、カード会社は4%から2%が一定の利用率だから、こちらも、その買い手の決済のサイトがどんなものであるかによって、ファクタリングの費用を決めていく。これは一見、商流に見えるが、実は資金流のお金である。

 物流については先述した通りだが、運賃が高くなる現在、社員が届けるにしてもコストがかかってしまう。従って、ハブ機能を持つ大田花きを使用した方が良い。そう考える出荷者が増えている。弊社からしたら、他の業務の流れで出来るのか、特別にその荷物を扱うのかでコストも違う。

 「情報もコストがかかるもの」だということを、産地も意識し始めた。例えば、今ある品種の中で、新品種が出てきた時、売れなくなった古い品種をまだ作っている場合がある。何種類も作って、手間ばかりかかって、結局、生産コストが落ちないのだ。こういった品種にアドバイスを求められる時もある。イクスクルーシヴで出荷頂けるなら、未来投資としてアドバイスの代金は頂かない。しかし、弊社へは十分の一しか出荷されず、他の市場に十分の九も流れてしまうなら、コンサルタントフィーは当然に発生してしかるべきだ。足代と人件費ほど高いものはないし、独特の情報分析に基づく未来予測だから、その価値分支払うのは当然だ。こういうアクティビティやノウハウについて、ようやく世界標準で、日本でも世界の市場流通と同様に料金が発生してきていることが分かる。

 消費者はここ20年、所得が増えていない。その人たちに花や緑を買って貰うには、どうすれば良いものを安く作れるか、安く流通させることが出来るかを考え、消費者にお金を出しても良いと思ってもらえるものは何かを考える。そこから、全ての仕事を組み立て直していかなければならない。

 業界を乗り越えた所でビジネスが生まれる時代になり、ビックデータとAIの時代になり、供給サイドの競争レベルは誠に厳しい時代となった。そんな時代にあって、大田花きは新卸売市場法の下、卸売市場の機能を四つに分けて磨き、役割を果たそうとしている。今後、品揃え、価格、利便性。この三つの顧客志向で、四つの流通を縦横無尽に使っていく。ぜひともご期待頂きたい。これが、大田花きだけでなく、“beyond 2020”中央卸売市場の卸会社のの姿だと思っている。

投稿者 磯村信夫 15:47