社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年08月06日

分かち合う


 夏休みを頂いて、ニューヨークとワイキキに家内と一緒に行ってきました。飛行機とホテルのみ決めて、それ以外は特に予定を立てずに向かい、セントラルパークやハイライン、雑踏の5番街やマディソンを散歩したり、ワイキキで泳いだりしました。観光地でしたので市民生活を見るという訳にはいきませんでしたが、ニューヨークではTマークのウーバーがタクシーと同じくらい走っており、利用者が多く見受けられました。また、ワイキキは格安の乗り合いバスで移動する人たちが多い印象です。 そして、とにかく物価の高さが際立っていました。花も一定レベル以上の商品は、ニューヨークもハワイも日本の小売価格の倍はします。物によっては三倍の値段でした。食事も、量はさておき質の満足度からすると、二倍から三倍の値段がしますので、日本が割安に感じられました。

 日本は簡便なVISA発行と、為替が1ドル110円前後と安定している所為もあり観光客が増えています。移動手段にしても、あの電車の通勤ラッシュアワーの込み具合を除けば、東京の交通渋滞だってどうってことはありません。大変過ごしやすい国だと思います。少し慣れれば、ホテルも食事も割安なのできっと満足してくれることでしょう。しかし、日本の複雑な電車網や道路網は、標識が不親切だとも感じます。観光客が道に迷わず気楽に移動出来るようにする。カードやスマホでの決済をもっと分りやすくする。英語と中国語の標識整備等を、徹底的に改善をする必要があるでしょう。

 今朝、そんなことを考えながら八月盆の需要期に突入した現場を巡回していますと、ブーケメーカーの買参人のシェアが高まっているように感じられました。こんなに暑いのに花を使ってくれるのは、文化があるからでしょう。本日は、第二次世界大戦で広島に原爆が落とされた日です。さらに、9日は長崎の被爆。それから15日の昭和天皇による戦争終結を意味する無条件降伏のメッセージ。そして、9月2日敗戦。戦艦ミズーリでの降伏文書調印へと続きます。8月15日を中心としたお盆のこの時期、私たち日本人は、今生きていることが先人たちのみならず、この地球上の生きとし生けるもののおかげであることを感謝し、家族と共に過ごす筈です。少なくとも、心の中だけでも共に過ごすのではないでしょうか。そこには、お供えの花があるし、智慧のともし火としての蝋燭の火があるのです。

 花き業界の売上において、専門店のパイが圧倒的に多かった20世紀後半、需要期には相場が上がりました。しかし、今は消費者が求める価格帯が決まっていますので、量は捌けるが一本の単価はあまり上がらない状況です。数字だけで見れば、単価が抑えられるから昨年の105から110%の量を扱わなければ昨年並みの売上になりません。ですが流通量が多くないとすれば、目標金額もあるでしょうが、やはり「分け合う」ことが必要ではないでしょうか。現在の無駄をしないシェアリングビジネスの基本でもある「分かち合い」で、より幸せになれるのではないかと思うのです。この方向性が今後の世界の人々の生き方だとすれば、花き業界も昭和の時代と比べるのではなく、産地も市場も小売店も、分かち合う、分け合うを並列にネットワーク化する。こういうビジネス体に進むべきではないかと思われます。家族が幸せに暮らしていくための小道具として花を使ってくれることを、まず有り難いと考えるのです。これが、1980年代に生まれたミレニアル世代が引っ張っている現代の経済や生き方の方向性なのでしょう。休暇を頂き、このように感じて帰ってきた次第です。

投稿者 磯村信夫 15:20