社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年11月22日

冬場も花店に足を運んでもらいたい。


 今日、大田花きは「ツリー市2021」だ。アメリカも今週木曜日の感謝祭とクリスマスで盛り上がる時期になった。日本も新型コロナが沈静化しており、勤労感謝の日、クリスマス、そして、お正月に向けてセール等で活気を得ようとしている。

 コロナ禍のステイホームで、生活者は以前よりも観葉植物や花鉢等を身近に置くことが増えた。今までは20cm位の一般的な花瓶しかなかった家庭で、「もう少し丈の長い切り花も飾れるように」と、大きな花瓶も揃え、花のある生活を始めた人たちも多いだろう。この中で、当面の花き業界の心配事としては、ここのところの諸物価の値上がりで、需要が縮小してしまわないかということ、そして、燃料費も高騰しているので、来年1月から3月までの生産量が減少してしまわないかということだ。

 ホームユースを定着させるには、商売の基本に忠実であることしかない。店頭では産地表記を国別、県や地域の産地名称まで書いて販売する。値段の表記も大切だ。そして花の場合、食べるものと違って、食べておしまいではない。家庭で飾ってから切り花なら少なくとも1週間、花鉢なら一か月以上は美しさを保ち続ける。その為の正しいケアの方法をお伝えすることは、販売する方にとって当然の責任だ。店員さんが教えるのも良し、ちょっとしたメモを添えて置くのも良し。また、鉢物が枯れてしまった後の処置について、土や鉢等どうしたら良いか生活者に説明することも必要だ。以上に近いことは野菜や果物で既に行われていることだ。更に、需要が多く供給が足りないものについては、なぜ、値が上がっているのかを説明すること。切り花の場合、枝物や葉物は少なからず出回っているので、上手な取り合わせでボリュームをつけること等、当たり前の説明や説明書きが必要だ。そして切り花も鉢物も、時代と共に流行がある。また季節によって人気が異なる。その楽しみ方を生活者にお伝えする。洋服や様々なものを販売する際にどの小売店でもやっている当たり前のことを、花き業界でもしっかり行っていくことが必要だ。

 さて、2022年1月から3月までの産地からの出荷だが、供給量が潤沢に出てくるとは思えない。まして、ラニーニャ現象で寒い冬となりそうだ。手不足で人件費も上がる。そして、花の生産出荷に関わる資材費や燃料費、運送費も上がってきている。卸売価格ばかりが上がり、小売価格に中々転嫁できないことも経済状況によってあるだろう。しかし、そこは生活者に理解を求め、やはり上げざるを得ない。例えば切り花の場合、「冬場はもちが良くなるので、小売価格が上がっても、一日当たりの鑑賞コストは夏場と比べてまだ割安です」といったことを説明するか。あるいは、もちのよい枝物や葉物を取り入れて、切り花の入れ替えで済ます等、価値に見合った提供を行えるようにする。鉢物なら、冬場は水をやり過ぎて根腐れを起こすこともそんなにないだろう。本当に少量の水ですむこと、寒さ対策をしっかりしてもらうことをお伝えすれば良い。

 卸売市場からすると、生産者様に「小売さんが頑張って売ってくれるから、頑張って暖房をしてでも素晴らしい花を1月~3月出してください」と伝えたい。小売店は花き業界の最終アンカーだ。当然、お客様である生活者に万全の価値あるサービスをしてくれるはずだ。それを信じて花の小売店が生活者から敬遠されることのないよう、生産者をはじめサプライチェーン上のみんながリテールサポートを行い、家庭需要の拡大を目指していきたい。


投稿者 磯村信夫 13:24