社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年06月25日

公共インフラとしての卸売市場


 「自民党卸売市場議員連盟」をご存知だろうか。自民党の国会議員100名以上が参加されている勉強会で、森山裕会長、盛山正仁幹事長、平将明事務局長が名を連ねる。日本各所に配置されている中央卸売市場や地方卸売市場を、生鮮食料品花き流通の社会インフラとして認めて頂き、地域に欠かせない機構として機能するよう、また、生産者と小売店、消費者の為に役立っているのか、卸売市場を構成する卸・仲卸の経営が上手くいっているかを、先生方に見ていただいている。実際は、国や地方自治体が卸売市場の開設者や認定団体となって支援してくれている訳だが、卸売市場が時代の変化に対応していくためには、前例のないこともやらなければならない。望ましい卸売市場のあり方を議員の先生方に検討いただいているのだ。

 “ミドルマン(中間流通)”が必要なのは、取引コストが削減出来るからだ。これは、ロナルド・H・コースの定理で実証されている。同様に、マーガレット・ホールの法則でも、“ミドルマン”がいることによる様々な無駄の排除が理論づけられている。この“ミドルマン”の中には、商社も問屋もある。その中で、生鮮食料品花きにおいて卸売市場が必要なのは、差別的取り扱いの禁止、(中央卸売市場は)受託拒否の禁止、代金決済の早期化、特にこの三つが卸売市場にはあるからだ。作るに天候、売るに天候の生鮮食料品花きの流通において、「目先の利益や効率を一義にしてはならない」というルールであり、それが故に多種多様な魚や青果・花が集まり、市場の人は目利きとなり、その時余り気味のものはディスカウントストアーに並んだり漬物になったりドライフラワーになったりして消費者に届けられる。こういった多種多様な需要を卸売市場は取り込んでいて、結局、生産者も消費者も良いという流通上の役目を果たしている。卸売市場がなぜ必要か、なぜ公共的であるかの証となっている。自民党卸売市場議員連盟の先週の会合では、「卸売市場の人たちは、自分達の仕事が社会的に大切な仕事であることを、一般市民の理解を得られるよう発信努力し、自らもルールを守り、一生懸命やって欲しい」と盛山幹事長から激励頂いた。

 今度の改正卸売市場法では、国は開設者に対してのみ指導することになる。中央卸売市場や地方卸売市場も、様々な形の卸売市場が出現するだろう。青果と生花が一緒になったり、もっと総合的な卸売市場になったりするかもしれない。その中で一点、重要なポイントは、卸と仲卸の仕事の仕方は違うということだ。卸は先述したルールを守る。また、買付をする場合も、足元の利益のためではなく、買参人のための量の確保、品揃えの確保、これが買付をする条件だということを忘れてはならない。もし仮に開設者が民間になったとしても、国際認証団体がそうであるように、卸・仲卸に対し、卸売市場の仕事がフェアに行われているかどうか、厳しい指導が必要だ。地方市場ならば自由にやっても良いと思っている人たちもいるが、とんでもないことだ。問屋なら卸売市場ではない。卸売市場はあくまでも差別的取り扱いの禁止、代金決済の早期化。これが、社会インフラである証である。フェアな取引を通じた確固たる卸売市場サプライチェーンを構築し、産地と消費者、小売業者の役に立っていきたいと思う次第である。

 




投稿者 磯村信夫 17:15