社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年07月09日

先回りして、デザインする


 米中で貿易戦争の様相を呈してきたが、「世界貿易でそれぞれの国が豊かになっていこうとする方針」は変わらないのではないだろうか。

 G7各国は、いずれも人手が不足しているのに賃金はあまり上がらず、インフレ率も抑えられている。日本の場合、会社の収益見通しが明るいものではない為、賃金を上げ製品価格に転嫁し、経済成長をしていくということが出来ていない。ヨーロッパでも、エネルギーコストはじめ、社会インフラの諸々が、IOTやインターネット、太陽光や風力発電、あるいは、シェアリングエコノミー等々により、限界費用が下がっている。これが、人手が不足しているのだが人件費が上がらず、インフレ率が抑えられ、経済成長が低い理由になっている一因とも言われている。

 1991年にソ連邦が崩壊し冷戦時代が終わると、戦後に先駆けて軍需から民政化していった日本のように、世界の英知が民政化商品に集中したので、グローバル経済で“モノ”の交易が盛んになり、より競争が激しくなった。その為、ちょっとした変化でも、ユーザーに先回りして製品やサービスをデザインしなければならなくなっている。手短な例を挙げると、今年に入って、スーパーやコンビニでは、缶コーヒーではなく、ペットボトルに入ったコーヒーを多く売るようになってきた。サントリーが始めたのだと思うが、色々なメーカーがペットボトルでコーヒーを売っているのが目につく。アルミ缶のメーカーは売上をかなり減らすことだろう。通勤中によく見かけるホームレスの方々で、アルミ缶を回収して生活している人もいるが、彼らも大変なのではないだろうか。つまり、“モノ”の場合、人々の生活をよく見て、その人たちが「カッコいい」と思ったり、より良い生活がその“モノ”を買うことによって実現出来ると思えるものに、たとえパッケージだけだとしても変えていく必要があるのだ。それだけ、“コト”消費が中心となっている現在、“モノ”を買ってもらうということは難しい。我々日本人が買うにしても、輸出するにしても、また、国産だろうが、輸入品だろうが、トータルをデザインして(例えばペットボトルなら、どういう場所に置かれて、そして、身の回りの環境を素敵にさせるか。デスク周りなのか、自宅のテーブルの上なのか)、豊かさや幸せと感じることをデザインしなければならないのだ。

 キリンの生茶が売れて、「なるほど、ペットボトルもこういう風に使うのだ」ということが分った。すなわち、ティータイム時に、日本茶に求めるイメージに沿ったパッケージだと感じた。その後出てきているものも、机の上やパソコンの横に置いて、どんなものが似合うか。そこまで計算されて、コーヒータイムを、あるいは、ティータイムを演出している。花も同様だ。デザインまで含めて文化になっていることを忘れず、買い手ユーザーの生活状況をよく見て、先回りして、商品を作っていくことが必要だ。


投稿者 磯村信夫 15:40