社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年08月01日

値上げの中で花の商売を採算合わせるために


 新型コロナ第7波で、今回は消費経済ではなく、供給経済の方で問題が出てきた。普通の会社での従業員欠勤は、1割近く、多いところでは2割とも言われている。アメリカやイギリスの様に常時多いと、在宅勤務などが通常の勤務体系となり、仕事の仕方も変わってくるのであろうが、日本では外資系以外はまだそこまでいかない。色々なものの見積もりが遅れたり、工事が遅れたり、はたまた、欲しいものが手に入らないという状況である。値段も上がってきて、えっこんなに高いのか、とびっくりする。

 長い間日本ではデフレが続いたため、メールの返信も時間外でも返って来たのに、今は時間外で返信するとマイクロソフトや会社からむしろお小言を言われ、ワークライフバランスを守れと言われる。そして、物価も値上り、働き方改革で定時で仕事がSTOPとなる。何かこのコロナ禍ですっかり時代は変わってきた様だ。しかし、悪い方にばかり変わっているなんて思わないで欲しいし、良い方に変わっていると自身で思い、自分はもっと世の中を良くしようと努力すればいい。例えば、円安だが、物価高で政策金利を上げたアメリカやヨーロッパは、現在の需要旺盛を鎮静化すべく政策金利を上げたのであって、これから景気は冷えていく。一方日本は需要が足りないからゼロ金利なので、そうすると相対的には日本は景気が緩やかだが良くなっていく。こうなると円安も一定水準になって行くし、何も経済だけで生活しているわけではないが、気持ちは明るくなる。

  この様にして花の輸入品も以前とまではいかないが、今よりも潤沢になり海外産地を充てに出来る様になる。それがこの10月頃からだ。確かに物価高で単価は上がる、しかし、品物も産地も選べるのだ。国内は来春以降も苦しい状況が続く。種苗を海外に頼っているものも多く、もちろん油、資材、肥料なども同様に海外に依存している。今作付けをどうしようかと悩んでいるのは、来春以降に出荷する花である。まだ今後の経済と物価の見通しは暗く、新型コロナも第7波でどんな変異種が出て来るかわからない。だから、70歳以上の生産者は花の作付け面積を減らしたり止めたりしている事が多いが、高齢者といわれる60歳以上も一般的にそのように言われている。私は、だからチャンスだと生産者に言っている。サプライチェーンで特に国産回帰で、今後地球温暖化CO2削減を考えたら、国内産地が優先的に選ばれるし、日本人の心情的には地産地消は最も素晴らしいと思っている。よって、東京の住人ならまずは、首都圏の千葉・埼玉・東京・神奈川の花つくり生産者の皆さん、更にその外側の茨城・栃木・群馬・山梨・静岡の生産者の皆さんには、特に花つくりを頑張ってもらいたい。またその少し外側の福島・新潟・長野の皆さん、2024年から働き方改革関連法が運送・物流業界にも適用されることを考えると消費地に近いという事は大変有利な地理的条件を備えていることになる。物価高であっても、所得増を見込める。赤字になる事はないだろう。ぜひとももう一度自分の仕事を見つめなおして頂いて、一人一人、個人ではなくチームで、あるいは産地の組合で、声が消費者に届く様に強くなって頂き、農産物、花を市場にご出荷頂きたい。市場は小売店にどこの誰が作って、そこは減農薬に取り組んでいる、あるいは、ここに来るまでのCO2排出量や、ちょっとした苦労話、あるいは似顔絵や写真でもいい、そういったものを添えて店頭で販売する、あるいはネットで販売する。そうすれば必ず、投下資金は回収できるし、利益が出る筈だ。売ってもらった小売店までが、サプライチェーンのひとつのチームで、この小売店に、もっと売ってもらえるように、出荷が一段落したら、次回の作付けを、市場と一緒に行って訊いてきましょう、あるいは市場に訊いてもらいましょう。それを来年の作付けの参考にして生産すればよっぽどの失敗をしない限り、来期の売上が見込め、予算が達成されるようになるのです。ここでのポイントは、自分が属している組織は、良い生産出荷組織かどうか、ということです。この組織は農家の役に立とうとする組織じゃないといけません。そして出荷する市場は良い市場でないといけません。花を買ってくれる消費者の事を、即ちお金を払ってくれる人の事をいつも思い、どうすればお金を出してでも花を買ってもらえるのかを考えている市場の事です。そしてセリ取引にしてもセリ前取引にしてもその生産者は自分のものがいくらで誰に売られたか、リアルタイムで分かる様になっている市場が良い市場です。その農協の考え方、市場の考え方、この良いところと一緒に生産者と小売店は結びついて、サプライチェーンを形成する必要があり、その線ができたら絶対的に花の生産と花の小売業は儲かります。いくつかの条件をお話しましたが、まだ昔ながらの習慣で、農協に持って行ったらおしまい、市場に出荷したらおしまい、何も考えず市場に仕入れに行って安いから買ってきてそれを売っておしまい、これで存続できる程世の中は甘くない事はご存じだと思いますが、花き業界も人のために仕事がある、という事を想って、今一歩10月に向けて前進をしてもらいたいと思います。遠隔地の産地は既に物価高騰でも勝てるよう改革をおこなっている最中で、物流分野では、セオリー通り、大型車で荷をまとめ、積載効率を上げて品目品種を絞ってロットを上げて出荷して来ています。買参人は、このメッセージ性の強い産地をあてにしているので、良く値が通ります。その産地は黒字で儲けている産地です。

   


投稿者 磯村信夫 17:58