社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年01月28日

今の時代に合わせること~花のある生活をしてもらうために~


 先週の25日(金)、朝のテレビ番組・BSテレ東「日経モーニングプラス」で、(株)大田花き花の生活研究所の内藤さんが出演し、「何故、花は魚や果物と比べて卸売市場経由率が高いのか」、「値段の決まり方」等を解説した。

 花は嗜好性の高い“見るモノ”だ。故に少量多品目となり、品種や階級まで入れると1日1万5千アイテム以上が扱われる。こうなると、プロでないと正しい評価は出来ないし、需給バランスも推し量ることが出来ない。従って、卸と仲卸、そして多岐に渡る需要を代表する買参人が取引に参加し、適切な価格を出すことが必要だ。その意味で私ども大田花きは、東京証券取引所と同様、扱う商品の価格が日本の指標となるように、セリ以外の取引の制限を行い、セリをしっかり行って正しい価格をつけている。同じ市場にある日本一の東京青果セリ場でも、メロン等価値の高い品目で一定レベル以上のものは、現物を見て1箱ずつセリが行われている。

 ネット社会の現代において、あらゆるものの販売の仕方は刻々と変化している。物がまだ不足していた時代は、所有することに価値がある“having”の時代だった。その後、物が一定水準まで行き渡ると、何かをするためにものを使う“doing”の時代になる。そして現在、物を所有すること自体に価値を考えなくなり、ライフスタイルに合わせた、人それぞれの在り方を模索する“being”の時代に突入している。花き業界のパイが縮小しているのは、相変わらず枯れたら購入する交換需要と、伝統的な文化の需要による消費が中心だからだ。つまり、「お墓参りに行くから購入する。」だとか、「お正月だから松と千両を購入する」といったような、伝統的な消費に多くを頼ってしまったからである。
 
 この現状を打破するためには、まずは“doing”、モノ消費だけではなく、コト消費であることが必要である。その花を買って何をするのか、機能性、あるいは物語性を訴えて買って貰うことだ。食べるものを例にとると、美味しいのはもちろんだが、「これはこんな風に体に良い」「健康に良い」等謳われるヨーグルトなんて本当に分かりやすい。同様に、花も「交感神経・副交感神経のバランスが取れる」であるとか、「オフィスに置くとこのように生産性が上がる」であるや、「痴呆症防止になる」等、沢山の具体的なエビデンスがある。「美しい」だとか、「文化的」なことは今まで十分にアピールしてやってきた。貰った人がどう喜ぶか、喜んだ時にその人がどんな状況になっているか。あるいは、プレゼントした方はどうか等、“doing”をアピールしていく。そしてその先の“being”、情緒的なところに繋げていくのである。
 
  人は「お金」、「衣食住」、「健康」、「文化」、「手短な自然」、これが揃って初めて幸せになる。花はこのうち「文化」や「手短な自然」の中で使われるが、例えば「子供部屋に花を飾る」といったホームユースでは、あまり「買いたい」という強い欲求に繋がっていかない。従って、先述した通りに、まずは“doing”で花を贈ってどうするか、どう飾るか。ここから始めていくことが必要である。これが出来れば、花の売り上げは必ず上がる。街から花屋さんが少なくなった分、スーパーマーケッド等の売り場は増えた。花屋さんでもスーパーの花売り場でも、思わず買いたくなる売り場にしよう。「黄色やオレンジの花を飾って元気になろう」と言ったようなポップをつけても良い。こういった活動を続けていくことが、“being”の中にある「シェアエコノミー」、そして“定額制サービス”の「サブスクリプション」の時代に必要である。
 
 先日、(一社)花の国日本協議会で大分市にお邪魔したおり、大手花き小売店の社長もサブスクリプションに取り組んでいると仰っていた。モノを所有しないシェアリングエコノミーの時代において、時間価値を大切にする人たちは、このサブスクリプション消費、販売方式のものを利用する。一部、花で成功している例も出てきたが(私の尊敬するサンフローリストさんは、花と緑の世話人として何件ものお客様と契約されている)、今まで他の業界でやっていた “doing”の認知をしなければならない。花を贈ったり花を飾ったりして“どうするのか”。“どう感じるのか”。遅ればせながら、これらを消費者に訴求し、次に生活者本位のシェアリングエコノミーの時代にふさわしいサービスの提供や、使い方を考えていかなければならない。
 
 
投稿者 磯村信夫 17:20