社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年05月21日

今、人気の「手短な自然」の花


 19日(土)の晩、ヘンリー王子とメーガン妃の結婚式がTVで実況放送されていた。ウィンザー城内の聖ジョージ礼拝堂の飾りつけは、丁度この時期に咲いているイギリスの庭の花々だ。また、ブーケも同様であった。まさに「シャンペトル」、自然調な感じがした。そして、ブーケは花嫁さんだけが持つのではなく、子供たちも持っていたから、何か柔らかく、儀式の決まりに変な硬さが無いように感じた。イギリスだから、てっきりバラだと思っていたのに。きっと、日本の結婚式も、こんな風な飾り方が増えてくるだろう。

 昨日はバラのイベント三昧だった。私は横浜高島屋の「第136回横浜バラ展」、メットライフドームの「第20回国際バラとガーデニングショウ」の二つを堪能した。また。これは時間的に行けなかったが、神代植物公園の「春のバラフェスタ」も開催されていた。

 私は池袋に出て巣鴨に向かい、地蔵通りの風景を見にいった。「おばあちゃんの原宿」と言われる巣鴨であるが、今は若い格好をされた方々が本当に多い。地蔵通りに面したお花屋さんの店舗を覗いてみると、四十歳代の方々が好みそうな花が並ぶ。しかも、ナチュラルな枝物も多かった。このお花屋さんは、エディブルフラワーや減農薬、無農薬の花まで含めて、最先端をいく花屋さんだが、街の雰囲気がそういうような品揃えをさせている。”和”のものもあったが、枝物、ルリタマアザミや桔梗、芍薬、そして、花弁や茎の細いユリ等だ。なにやら“和”は、若い人たちには一周回って新しいものとして映っているが、そういう品揃えもしてあった。

 巣鴨から都電荒川線に乗って、下町に帰る。都電荒川線の沿線には、この時期バラが咲くことで有名だ。もう早いものは終わっているが、でも、綺麗だった。町屋近辺では、バラの市が開催されていた。昨日は三社さまのお祭りだったので浅草方面には行かず、日暮里から根岸千駄木方面を歩く。からっとして、ふきぬける風がときおり寒く感じるが、しかし、日差しは強い。ここでは小さなお店が多く、もう、着物ではなく、浴衣を着付けた人が歩いていた。昨日はちょっと寒い感じもしたが、一足早く、冷麦やそうめん、あるいは、ざるそばやらところてんのようなイメージの涼しげな装いで歩くのが、ひとつの格好良さだ。

 谷中から根岸にかけては、花屋さんは多くはない。今のところ、飲食店やお茶を飲むところが出来ているくらいだ。南青山と同じように、花屋さんも多くなってくると嬉しい。花屋さんが一軒あったので覗いてみると、立派なトルコキキョウがあった。また、菊は中輪に近い、葉は刻みが多くしっかりしたもの(サマーイエロー)や、桔梗や、ユリでも、和を思わせるタイプの、花弁が少し細い中輪系のものが置いてあった。近所のお茶を飲むところや旅館等が買いに来てくれたり、そこに生けこんだりしているという。

 クールジャパンですっかり新しい“和”が人気になり、多様化してきている。花の領域では、日本みたいに、ミヤコワスレやナデシコ、リンドウ等、古くからあるものを一生懸命、園芸品種にして育てている国は他にない。江戸時代に入ってきたキャベツを品種改良した葉牡丹も、まさに日本のものだ。この“和”の花きを、特に夏場に増やす必要がある。

 多様性の中での“和”のブームを、どのように商売に繋げることが出来るか。これを考えながら帰路についた。


投稿者 磯村信夫 15:57