社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年02月14日

人的投資からスタート


 今年のフラワーバレンタインの商戦は、今のところ天候に恵まれず、出足は期待した程では無い。その中にあっても、2月10日(木)の金子農林水産大臣の恒例記者会見では、フラワーバレンタインに言及いただいた。きっと奥様にもプレゼントされたことだろう。このように国を挙げて盛り上げてくれているし、日本各地でフラワーバレンタインのイベントが開催されている。少々のことでへこたれないで、前を向いてやるべきことをやろう。日本電産の永守会長のお話のように「出来るまでやる」というのは、プロモーション活動においても当然だ。やっていきたい。

 さて、2月になり、大田花きでも来期の予算をどう組み立てるか、投資や人事に関することも含め最終的な調整を行っている。諸物価が上がってきている今、大手企業を中心に社員の給料を上げる方向にある企業が多い。連合(日本労働組合総連合会)は4%の賃上げを求めているし、経団連の中でも、業績によって出来るところはそれを受け入れてやっている。社員は重要な資産だ。社員が会社を背負ってくれているのだから、今後とも給料については、ESG経営(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)を念頭に入れて賃上げを行っていく必要がある。これは大手企業以外の中小企業も、そして対象は非正規雇用の人たちについても当然に考えなければならない。コロナ禍で業績が芳しくない企業も多いだろうが、人への適切な投資は必須となっている。 

 花き業界を見ても、日本の殆どの産業と同様、GDPは30年前と変わらない。20世紀末に生産性が上がってGDPも上がり、生産消費共に活発となった。そこから21世紀に入りデフレが更に進行、今や30年前の1990年と同じ花き業界GDPとなってしまった。社会の風評が「安く安く」、これでは供給サイド、日本のメーカーも、花き生産者もたまらない。従って輸入品が増えたり、海外に生産以外も含め投資し、その利益を日本に持ってくる。これをとりわけ21世紀前後位から今日までやってきてしまった。将来に不安があるから個人も企業も貯蓄が増える。海外に投資をしたから、国内の投資はメンテナンス投資のみ。海外の利益で会社は回る。あるいは、個人の資産運用も成り立つ。このようなことではいけないと、また、コロナ禍もそうだが、いつどんな異変があるか分からないと、海外とのサプライチェーン、即ちグローバルサプライチェーンを見直し、国内投資に経済界も立ち戻り、また花の業界も戻ってきている。弊社もこれまで中国の上海で事業を展開しようとしたり(事情があって現在撤回しているが)、タイのバンコク大田花きは今も頑張っているし、更にシンガポールでも事業を行おうとしている。その中で改めて、国内投資の必要性を認識している。特に人的投資だ。例えば女性の役職者への登用もそうだし、結婚してもそのまま働き続ける女性が多くなっている。産休・育休後の時代に合わせた再教育等、働きやすい環境を整える必要がある。時代に合わせた再教育はベテラン社員世代も必要だ。

 さて、話を花に戻そう。我々はもう一度、農水省が目標としている2030年の花き産出額4,500億円、2035年の6,500億円に向け、出発していかなければならない。本来であれば2020年に号令をかけてやらなければならなかったが、コロナ禍でその機を逸してしまった。ようやくwithコロナでの業界の繁栄のさせ方が分かってきたので、2022年度をスタートラインに、国内生産の拡充、各業態の小売店での販売支援、即ちプロモーション活動促進等々を行っていく必要がある。もちろん、各社のDX化、サービスレベルの向上、小売店であれば気持ちの良い接客等、当たり前のことにも注力し、レベルを高めていかなければならない。

 2022年度、皆さんはどのような人的投資を、人的投資の中でも教育投資を行うとしているだろうか。また、DX投資、SDGs実践の投資を行うとしているだろうか。特別に考えていない会社があるとすれば、是非とも、まずは各社が花き市場なら、市場協会の方針とすり合わせながら、花き全国団体のプロモーションとも合わせながら、2030年を目指していただきたい。繰り返しになるが、企業は大変だろうが、社員の給料アップや社員教育等、最もやらなければならないこととして予算組をお願いしたい。



投稿者 磯村信夫 16:32