社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年05月29日

世界的な「普通」を目指す


 「母の日はいかがでしたか?」と聞くと、首都圏の専門店さんは「GWから離れていたので昨年よりも良かった」と言う人が多かった。一方、地方市場の方が言うには、GWから離れていたので、花をあげる側の子どもたちが戻ってしまい、むしろ昨年よりも業績が悪かったそうだ。こういった事実を聞いて、もっと日本全体のことを考えなくてはと思った。

 母の日ギフトの業者に変化が出てきた。ギフトという観点で見た時、ギフトは最寄り品ではなく買回り品だから、専門店で売れないとおかしい。例えば、お中元でスーパーからビールが届く。それよりも、デパートから同じメーカーのビールが送られてきた方が、印象が良いのではないか。これが品質の分からないクラフトビールやワインだったらなおさらだ。こういった「常識」が、今年の母の日の花ギフトで出てきた。センスが良く、品質にこだわる専門店からの母の日の花、これが一番売れたのだ。我々が生活する時、花のお買い場として専門店、スーパーの花売り場、カタログ販売・ネット販売、ホームセンターの四種類が必要だ。これを目的別に使い分ける。その中で、ギフトはやはり専門店なのだ。今年の母の日を見ていると、その「常識」通りになってきた。

 ようやく第二次安倍内閣で政局が安定してきて、携帯電話のガラケーではないが、残しておくべき日本特有の文化的なものとは別に、世界標準で整えるべきものを、世界の「普通」の国並みにしていっている。農業関係で一例を言えば、20世紀に入り、先進国の中で減反政策をしているのは日本だけだ。農産物の関税をかなり下げ、その農産物を国際価格に近付ける。その品目が国産であることが必要な場合、農業者に所得補償をする。しかも、生産調整はしない。その分、輸出を促進する。ヨーロッパの例を見ようとすると、競争力の高いオランダばかり挙げられるが、EUでは、ドイツでもイタリアでも農産物の輸出のウェイトは高い。一方、日本はようやく少子高齢化と米の減反政策を止めようとしている所で、輸出に力を入れ始めた。

 この頃問題になっているトラック運転手さんの問題は、皆さんもよくご存じの配車サービス・UBER(ウーバー)を調べればすぐ分かる。また、親会社と下請けの小さな会社では、同様の仕事でも賃金差がある等、日本はとても先進国とは思えない。これらは、21世紀になって、どこの先進国も是正している。特に1990年代に変化したことだ。日本は「失われた20年」。内側を向いてばかりで、こういった当然の改革を行ってこなかった。従って、小さな会社はなかなか経営が難しい。若者だって起業をためらうのも無理はない。日本は本当に独立起業家が少ない。これでは駄目だ。

 UBER(ウーバー)はオンラインタクシーの配車業務だけでなく、荷物の輸送にも参入している。日本ではトラック運転手というと、個人でやっている運送会社のイメージが強いかもしれない。アメリカと比べても独立系の運送会社、個人会社は本当に少ない。これは同一賃金同一労働の問題もあるが、モノを運ぶ「運送」について、業務の依頼主が後述する労働を考えていないからだ。一つは荷を積みに行く現場に着いた時だ。待機する場所はどこか、待機場所が有料だった場合は当然、運賃に跳ね返る。二つ目に荷を積む手法と時間だ。パレットなのかコンテナなのか、手積みなのか。また検品・受託書類のやり取り、そして、場合によってはエアサスが必要だったり、低温が必要だったり、湿度コントロールやエチレン制御等、付加価値のあるものについては当然コストがかかる。三つ目に、目的地に到着した時だ。こちらでも待機時間・場所によってもコストが違うし、先方の荷受体制と荷卸しの方法、検品と受領書の渡し方にもよる。さらに、もしパレット輸送や台車輸送で、先方が台車・パレットを必要としない時、帰り荷がその分積めないので、その分のコスト負担がある。まだまだあるが、このように「運送」を見た時、アクティビィティ・ベースドコスティングに沿って項目別に頂いていることが多い。自動車を購入する際の多様な料金設定を思い出してもらいたい。これと一緒だ。これが世界の「普通」なのだ。この「普通」の実現へ向け、国土交通省は標準貨物自動車運送事業約款を改正しようとしている。
 
 卸売市場でも、「まとめて幾ら」で行っているのは世界的には非常識だ。多分、20世紀のままで来てしまったのだろう。だから、仕事に対して若い人達が納得出来ない。これを、早く「普通」の常識に直して料金を明確にしていくべきだ。例えば、花市場は台車を使っている所が多い。仲卸が卸の台車を使っているのは、きちんと使用料を払っているのだろうか。EUでは当然払っており、アメリカの花き物流基地・マイアミもそうだ。1980年、鉢物流通で「フラコン」受益者負担の法則があった。その時出来ていたのに、今は力関係や、自分のことしか考えずルーズになっていることが多い。もし、仕事上でルーズになっており、おかしいと思うことがあったら、早速に正すべきである。生鮮食料品流通業界が「普通」な業界になっていくために、必要なことである.

投稿者 磯村信夫 : 17:44