社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年06月08日

世界同時不況下での、新しい卸売市場の姿を考える


 東京では、まだ県を跨いでの移動は自粛している。従って、土日は近所の公園や、少し遠い都内の大きな公園へ行く人が多い。また、繁華街やスポーツクラブも解禁されたので、少しずつだが、今までの休日の過ごし方を取り戻してきている。
 
 21週から23週までの間、月末・月初めということもあり、久しぶりに仏花素材や白いものが、高値ではないが例年の1、2割安まで相場を戻した。輸入がストップ、あるいは、少量しか入荷してこないことも手伝ってだと思うが、主に菊類を作っている国内生産者には良かったと、胸をなでおろした。しかし、葬儀やお墓参り等、まだまだ葬祭関係需要の弱さを感じるし、会社での葬儀に対する対応も、変わってしまっているのに気が付く。
 
 花き卸売市場は今まで休みなしで開場し続けているが、その間に来られていなかった生花店や生産者の方が何人もいらっしゃった。その間に残念な知らせもあり、「主人が亡くなってお店をやめることにした」、「父が亡くなったがお知らせしなかった」という花店の話を聞いた。さらに、電話やSNSで生産者のご子息から「父が亡くなった」と連絡が入ったものの、その産地までは行けないので「後日お線香を上げさせてください」と言って、葬儀を欠席したところもある。また、こんな時だからと、もうすっかり終わってからお知らせいただくところ等、社外だけでなく、関係会社の身内や本人の場合にも、今までとは違った弔いの仕方になってしまっている。
 
 先週から今週の、改正卸売市場法が施行する前の段階で、国や都等の卸売市場の責任者の方と話し合いを重ねている。今後の卸売市場のビジネスモデルについて、どうすれば産地や買い手との公正な取引契約が出来るか、また、取引の公正な手法は何か、開設者から公認会計士業レベルのチェックをしてもらえるか等、新しい市場法の下でどう出来るかを話し合っている。
 
 開設者の都としても、また、国にしても、税収の観点ではかなり厳しい見通しを取らざるを得ないだろう。リーマンショック後の2010年では、日本国内の法人の内70%強が赤字法人で、税金を払っていない。それがようやく最近、赤字法人が60%に近づくまで減少していたが、今度のコロナ禍により、赤字法人は確実に増える。卸売市場とサプライチェーンを構成している各社も同様だ。花の分野では、冠婚葬祭やイベント等の需要が減少し、これがしばらく続くだろう。今まで通りでは、自助努力ではどうにもならなくなってくる。従って、種苗から始まって生産、関連資材、物流、卸・仲卸、Eコマースまで含めた小売、このサプライチェーン全体をどのように最適化していくかが重要になってくる。業者数や仕事そのものが減少するかもしれないが、国も都も、まずは会社を生かす、雇用を生かす、この形で資金をつ注ぎ込んでくれている。その間にもう一度、縦のサプライチェーンの連帯を強固なものにし、そして、同業他社の横の連携を進めていく。生活者にとって負担の少ない金額で、お金の使い勝手のある生鮮食料品花きのサプライチェーンを、また、生産者が「生産してよかった」と思えるサプライチェーンを各分野で作っていく必要がある。これらのことについて、現在、行政指導をしてくれる国や地方自治体と話し合っている最中である。  

投稿者 磯村信夫 16:58