社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年07月23日

一律“買受人”


 ブエノスアイレスでのG20は、米中貿易戦争解決の糸口を見出せていない。エコノミストによりまちまちだが、概ね「直ちに和解し、雪解けする」ことは無いとの見解だ。急に元に戻るとはこちらも考えないで仕事をした方が良さそうだ。

 改正卸売市場法が国会を通り、2020年夏頃の施行に向け、基本方針や条例等の準備を進める段階だ。東京都の場合、中央卸売市場の開設者になることが決まっている。東京都と新しい市場法の下、どのようなルールで仕事をしていくか。そのポイントになる問題点を一つ取り上げたい。

 現行卸売市場法第36条1項にて、卸売業者が差別的な取扱いをしてはならないのは『出荷者又は仲卸業者若しくは売買参加者に対して』と定められている。しかし、今度の新法では、差別的な取扱いの禁止対象範囲が、「出荷者又は仲卸業者その他の “買受人”」となっている。仲卸も、現法で言うところの「買参人」も、そして、買出人も並列化し、一括りに”買受人“としているのだ。つまり、従来の「買出人」も含めた全体の中で、卸から直接買いたいと希望し、与信から卸が販売しても良いと判断すれば、卸の取引関係者となる。地方卸売市場では、卸が開設者となって市場を運営しているので、卸が買受人の登録もセリ参加の権利も付与する。これと同様にするのかどうかがポイントだ。新法の“買受人“となった時、 “買受人”認可については開設者である東京都の監督事項にはならない可能性もある。卸が“買受人”を決めるのか、仲卸が“買受人”を決めるのか。基準をどこにするのか決めるのも中々大変だ。

 さらに、取引において卸が差別的取り扱いをしないといっても、仲卸のように量を多く買う買受人がいる一方で、ご夫婦で経営している一軒の花屋さんの買受人もいる。量的には圧倒的に仲卸が多く買う。後者の小売店から「仲卸と比べたら差別的取扱いだ」と言われても、それは差別ではないだろう。しかし、この線引きをどうしたらよいのか。商法を判断の基準にするのだろうか。

 新しく作られる条例が昔のままでは、時代に合わず後退に繋がる可能性がある。しかし、差別的取扱いをしない前提の下、どのようなルールで卸売市場の商流・物流・情報・決済をすれば、出荷者と消費者が卸売市場を通すことによって「他のチャネルよりも良かった」と思ってもらえるか。ようやく新市場法が出来たのだから、後戻りしないよう作っていく必要がある。


投稿者 磯村信夫 16:28