社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年05月25日

リモートワーク


 今朝、出社すると、ロジスティック本部オンディマンド推進センターのサブリーダーが、大きな字の書かれた紙をラミネートしていた。何をやっているのか尋ねたところ、「夏に向けて産地が切り替わり、大田花きへの運送が今年初めての運送店がいらっしゃる。新しいトラック予約受付システムのことをご存じない方もいらっしゃるので、もう一度、運転手の方に分かりやすい掲示を行おうとしているのです」との回答だった。
 
 本年4月から、中小企業でも働き方改革関連法の「残業時間の上限の規制」が始まったが、2024年4月から、猶予されていたドライバーに対する時間規制がスタートする。今までの長時間労働は出来ないため、より一層の効率化が求められる。大田花きでは、これまで市場に着いてもトラックが集中していれば並ぶ必要があったが、これを並ばなくても済むように「トラック予約受付システム」を導入した。ネットで予約し、決められた時間に行けば、何番のプラットフォームに行けば良いかを指示され、並ばずにスムーズな荷下ろしが出来る。これを、今夏の産地の荷を運んでくれている運送店に、周知徹底している訳だ。オリンピック・パラリンピック競技大会のある来年の夏も、物流対策をしっかり講じなければならない。
 
 さて、このように仕事の合理化を進めているが、「リモートワーク」についても、大田花きでどこまで定着させられるかを検討している。今まで大部屋一つで社員が業務をしていたが、ソーシャルディスタンスを保つために、4月から三つの会議室へロジスティック本部と情報システム本部が移っている。しかし、ウィズコロナで所定の注意を守りながら出歩けるようになれば、大田花きにはお客様が沢山いらっしゃる。会議室をなくしたままではいけないが、かと言って以前のように大部屋に戻したら三密になってしまう。従って、今後もリモートワークを増やしていかなければならないのだ。例えばノートPCにして、自分の机を決めずに、会社にいても出張中でも在宅でも、どこでも仕事が出来るようにしておく。現在、ノートPCの供給が間に合っていないが、このようなモバイルでの業務が必須だ。また、リモート会議も、大田花きでは2つのサービスを使って会議をしている。どの仕事がリモートで出来るかを模索中だが、この数を増やしていかなければならない。
 
 リモートワークの定着を進める上で、「人が見ていなくても、契約として仕事をする」。この意識をどこまで持てるかがとても大切だ。昔、アラスカ州のアンカレッジに住んでいる叔父の家に遊びに行った時、釣りに出掛けた。対岸で釣りをしている親子を見ると、子どもが釣った魚をリリースしないので、父親が叱っていた。釣った魚が小さければリリースしなければならない訳だが、子供は、その日なかなか釣れなかった中でようやく釣れた魚なので渋ったようだ。遠くからみると、持って帰って良い大きさに見えたが、どうもギリギリか、それ未満だったらしい。父親は息子にリリースする重要性を教え、リリースさせたのだった。また、アメリカの家族の話だが、息子が罪を犯したので母親が警察に突き出したというニュースがあった。正しいことだが非常に驚いた。日本であれば、息子を説得し自首させることはあるかもしれないが、警察に通報することはあまりない。この2つの事柄から伝えたいことは、欧米の「誰であろうと法やルールの前に平等であるべきだ」という考えである。もちろん、子どもは助かって欲しい。アラスカの釣りの例でも、子どもに魚を捕獲する満足を与えたい。それが親心だ。しかし、自分の子どもであっても、罪を犯したことに違いはないし、ルールにも従うべきと徹底しているのだ。
 
 法律やルール、そして、倫理の前ではみな平等である。これがヨーロッパやアメリカの社会で、素晴らしい考え方だ。一方、日本は、アジアの国の中でも、血が繋がっていない人を“認める”ことは出来る。優秀な人を役職に抜擢したり、会社の後継者に選ぶことが出来るのだ。しかし、「恥」なるものについては、身内だとそこまで厳格に、法やルールの前に平等ではない場合がある。このような性質がある日本において、リモートで仕事を個々に行っていくことは、個の確立を更に厳格にするだけでなく、まず“仕事”があり、その仕事をする“人”を雇うこと、つまり、仕事⇒人の順番が必要だ。我が大田花きも、“人”に“仕事”がついている日本の社会だ。では、どうしたらリモートワークで見られていなくとも、良い仕事が出来るだろうか。それは、一人ひとりが“大田花きの社員”として、誇りを持って仕事をするかどうか、この意識がどこまで出来るかによって成果が変わってくるだろう。
 
 最後に、リモートで会議をしていると、花や緑が画面にあることが、とても大切な視覚情報だと感じる。また、会議では、一人ひとり順番に発言すると、意見は聞くことが出来るが、アイディアは出てこない。10人位だったら、それぞれ声が重なっても良いのではないか。他の人の発言によってアイディアが湧いたり、触発される。こうでないと会議ではない。その辺も上手に使いながら、ソーシャルディスタンスを行っていこう。そして、働き方改革に合わせていこう。こう考えている。
 
 
投稿者 磯村信夫 15:40