社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年06月22日

ニューノマルが八割経済だとすると、どう取組むか。


 19日(金)より、政府が要請していた「他府県を跨いでの移動制限」が、全国で原則解禁された。したがって、この週末は、それぞれの繁華街や行楽地でも混雑したことだろう。今後は、ソーシャルディスタンスを保ちながら「温泉宿で過ごす」、「食事をする」、「高速道路のサービスエリアで列に並ぶ」等、以前の密集具合とは違う、空けなければならないスペースが必要だ。大田花きでも、セリ場で「密」にならないよう、セリ端末※①を徐々に取り外している。今月中には以前の三分の二にまで減らす予定だ。映画館のように座席が並んでいる様子をイメージしてもらいたい。これを1つ置きに座るよう、列ごとに間引いている。こう考えると、今後、観光関連、そして、アミューズメント、文化関連の会場や業者は、人数制限が必要なので経営上難しい部分があるだろう。そんな時、サービスを享受する側では、「やってくれて有難う」という観点から、サービス供給者に対し、同じサービスを受けるのであれば値上げを受け入れる、あるいは、省力化に協力する等の対応が必要だ。これが、それぞれサービス業・文化産業が持続的に営業出来ることに繋がるのではないだろうか。外食チェーンでも、損が出そうな場所の閉店を急いでいる。残念ながら、今後もこのような業者数が減る波は起こりそうなので、その店や劇場のランクに関わらず、利用する人たちの理解と、応分の負担を求め、八割経済でも合うよう全体が協力する必要がある。
 
 昨日は「父の日」だったが、セリ前取引では、専門店は良く売れ、量販店は思ったよりも売れていなかったと話をきいた。「母の月」の需要と比較してしまえば、「父の日」のマーケットは確かに小さい。しかし、「父の日」でも花を選んでもらえるようなPRや販促を、業界全体で、また、それぞれの店で行っていく必要がある。さて、そのセリ前取引から、冠婚葬祭も生け込みも、温泉地のホテルの花も、家庭需要も法事も、色々なものが、withコロナの新しい花の需要バランスを取ろうと試行錯誤し、そのバランス取りが始まっていると感じている。世界ではまだまだ感染者が増えており、WHOは「パンデミック」だと言う。また、アメリカの感染学者は、コロナ禍を野球に例えると「まだ二回表だ」と言う。この状況下で、どのように採算を合わせていくのか、試行錯誤しなければならない。例えば、セリ前販売では、大田花きであればオリーブ+※②を使った相対を、セリでは在宅ゼリを推進する。特にオリーブ+は、生産者も買参人も24時間利用し見ることが出来る。非常に便利で、かつ、時間や移動のコストを考えれば、経費は本当に安く済む。また、改正卸売市場法施行により規制緩和が進んだので、今まで市場外流通に流れていた取引を、卸・仲卸がチームを組んで仲介し、市場の中に取り込むことも戦略として進めることも出来る。
 
 withコロナで制約条件が新たに出来た。その中で21日(日)改正卸売市場法が施行され、市場法の規制緩和がなされた。旧態依然のルールではなく、今の時代に合わせたやり方で商売をする必要がある。「何でもアリ」となってしまい、競争が激しくなるのではと心配する業界の方もいらっしゃるだろう。もちろん、「何でもアリ」という訳では無い。今まで以上に、それぞれの業者が信用のおける行動をしなければならないのだ。改めて、「その会社は信用がおけるかどうか」を判断する。そこで、その主要会社、その産地、その運送会社、その卸・仲卸、その小売店と、一連のサプライチェーンを信用がおけるもの、中長期的利益、持続的発展を第一に考えるもの同士で構築するのだ。重複を避けることでコストを下げる。協力することで付加価値を出す。こうすることによって、八割経済の中でも収支が合うようにしていく。卸売市場で言えば、規模と立地条件によって、果たす役割が変わってくるはずだ。先週、このコラムで(株)神奈川園芸市場を取り上げ、消費地における卸売市場の棲み分けを紹介した。「独自の色を出して運営出来るか」をまず考えてもらいたい。「独自で」と言ったが、「単独で」という意味ではない。信頼のおける供給先と小売業のサプライチェーンを構築する、つまり、独自のサプライチェーンを信用のおけるものにして、規模関係なく運営していく。これは絶対条件なのである。  

※①セリ端末:
買参人は一人一台、セリに参加出来るPCの前に座り、ボタンを操作して商品を購入する。これまで、大田花きのセリ場には約600台のセリ端末があったが、それを6月中に三分の二にまで減らす計画だ。  

※②オリーブ+:
大田花きが提供するオンラインサービス。参考はこちらをご覧ください。  

投稿者 磯村信夫 15:15