社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年11月12日

サプライチェーン+文化+汎用すなわち消費者需要


 物流費が高くなってきたので心配になり、お取引のある東北の卸売市場へ伺った。寒暖差は激しいものの、どちらかと言うと暖かく、フォーマルウェア礼服と同じ役割の白菊が潤沢に出てきて、相場も一服からむしろ安値市況になっている。産地からすると、暖かい秋、初冬で天候被害による回復も見えて、ようやく荷がまとまってきたところなのに、相場が安くなり、がっかりしているのではと思う。しかし、ここで消費者に今までは凶作ぎみでしたが、これからは安心して使って頂けますと店頭にあるいは同じ花束でも本数を多く入れていろいろな花が多彩に供給できる。年末の需要期を前にして、素敵な花がこんなにたくさんありますよとアピールできる良い機会と供給サイドとして前向きに判断してもらいたい。東北の各都市では確かに東京より若いお客さんが少ない。しかし、たとえご年配でも気持ちの若い人達は大変多くいる。集客の見込める店は、是非ともお花畑のように店をしつらえてもらって、販促を願いたい。

 地方の市場に行くと、輸入品が多く目につく。輸入商社の人達はどのようなサプライチェーンを作ろうとしているのか。輸出入協会大手では、個別で出荷先の事業採算をはじきだし、取り組む市場とそうでないところと、既に仕分けをした。中小の輸入商社はまだそこまでいってない。中小の輸入商社は地方の市場もお得意先とし、大切に取り組んでいるのなら良いが、そうではなく、コミュニケーションもあまり取らず、共通の目標も持たずして出荷しているとすると問題である。地方市場にとって輸入商社からの出荷は大変ありがたい、しかし入荷が安定していないところもある。大切なのは、安定した入荷。これは市場をやる限り、大も小もない。パイに見合った安定した入荷、そここそが、卸売市場を利用する買参人の一番願うところなのである。

 地方はまだ意識の上で、礼服であるフォーマルウェアと同じ役割である白菊に、特に基準をおいた相場作りをしている。しかし、世の中はドレスダウン、カジュアルになってきている。いろいろな組み合わせができるものになっているか。洋服と同様に花もそういった考えになっている。礼服は否定しない。むしろ大切だ。文化そのものだからだ。しかし、結婚式では既に参列者はダークスーツが一般的になったように、今後、地方市場もいろいろな需要に合わせて市況を出して欲しい。また、葬儀においてもアメリカやヨーロッパの影響を受け、親族や近しい人以外は平服っぽくなっていくものと思われる。日本でも葬儀の花はカジュアル化し、SP菊やバラをつかう葬儀もある。それは心の問題だ。亡くなった方が好きなもの、似合うもので装飾したい。そんな感じに自由になってきた。そうなると、地方においても市況の作り方が変わってこなくてはならない。白菊が高いと全面高になり、安くなると全面安では困る。是非とも、汎用性のある花をメインに流通させてほしい。やっぱり、業界全体のお客様はお金を出してくれる消費者であるから、その場その場で似合う花、好まれる花、どれが需要のある花か、その市況を花市場は自分の地域の相場として出すべきだ。

 天気予報のように的確な情報をその都度流すことはできないが、フォーマルで義務的必須の葬儀仏花にふさわしい菊類だけで市況を作るのではなく、ドレスダウンと、いろいろな需要に合わせられる汎用性の花、ここを頭に入れながら、地方としての市場相場を作ってもらいたいと思う。今回の訪問で、東北地方でも需要は多岐にわたっているのが確認できた。結婚式需要、葬儀需要、1日15日の仏花需要、週末の家庭需要、イベント需要、会社・料亭の活込需要他、明確にその時々に対して、市況のメリハリをつけていくことが必要であると感じた。そうでないと、地方の花はファッションから取り残されてしまう。需要にフタをしてしまうと心配している。
 


投稿者 磯村信夫 19:06