社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年04月27日

コロナ禍後の国や地方の在り方


 4月24日(金)、江藤農林水産大臣は定例記者会見の中で、「物流の混乱を避けるため、今年は『母の日』を5月いっぱいとする『MOTHER’s MONTH(マザーズマンス) 』としたい。業界がそのように提案していますので、農林水産省としても協力していきたい。メディアの皆様方もぜひとも一緒に協力して欲しい」とご発言いただいた。
 
 政府より緊急事態宣言が出され、総理や首長から5月6日までの外出自粛が要請されているが、これを「10日の母の日まで」としている地域もある。そうなると、毎年行っている生花店でも母の日まで閉店するお店もあるだろうし。外出自粛のため、遠隔地のお母さんへネットで贈る人も多いだろう。このままでは、10日に配送が集中し混乱は避けられない。どう考えても、ネット販売だけでは、母の日の花贈りは難しい。そこで、丸々5月を“母の月”と業界は位置づけ、お母さんへの花の販売促進をしていくこととした。これを国も応援してくれることを本当に嬉しく思う。さらに、(一社)花の国日本協議会では、「STAY HOME with FLOWERS」や、花の様々な効用をまとめた「#ビタミンF」をHP上で公開。ロゴやポスターを自由にダウンロード出来るようにしており、業界全体で花の販促を打ち出していこうとしている。さらに、農林水産省は緊急経済対策として、花き業界に向けての補助を作ってくださった。国民の心豊かな生活の為に花き園芸文化を維持し、さらに活発化させよう。輸出まで含めて、海外の方々にも日本の花き園芸文化を享受してもらおう。このように国が考え、我々と一緒に努力してくれている。大変心強いことだ。
 
 さて、新型コロナウイルス収束後のことを考えると、「グローバリゼーション」といっても、以前の「グローバリゼーション」とは異なる様相を呈するのではないか。すなわち、「自立する国家として、自国の利益を第一にする」。同時に他国の歴史や文化も認め、その上で、相手国と互恵関係になる。この順番で、「無私の精神で世界全体を」ということではなくなってきているのではないか。例えば、アメリカは自国を優先し、それから、関係する国々とお互いにメリットをキャッチボールする。そうした国の運営をしている。EUを見ても、結局、国レベルで新型コロナウイルス対策をせざるを得ず、ブレクジットしたイギリスと変わらない状況だ。この姿が、新しい国際秩序のありようになっていくのではないかと思う。これは日本国内においても同様だ。現在、県を跨いでの移動を極力しないように要請が出ていることでも分かる通り、一つの県、ないし一つの地方が明らかに違う独自性ある一単位となって、その中で、仕事生活、消費生活を完結させていく。英語で言うところの“enlightened※”の形になっていくのではないかと思っている。地方の仕事生活、消費生活がその地方で収まるような形こそ(日本はアメリカのように、州の軍隊がいないけれども)、好ましい。このような風潮になっていくのではないか。また、「地方自治」というものを、これまで以上に形成していかなければならないだろう。こういった変化に合わせ、(一社)日本花き卸売市場協会でも、卸売市場の整備や「地域の特色を出した品ぞろえや独自性ある卸売市場の形を」出す必要がある。また、卸売市場だけでなく、全国レベルの花き関係団体についても、地域の独自性等をもう一度しっかりしたものにしていく必要がありそうだ。

※※enlightened:
啓蒙された/見識のある、の意。「enlightened self-interest」の意味は、個人と個人の間柄では、外国人との関係でも自己の利益は他者の利益を尊重することによってももたらされるべきだが、国家間・地域間においては、「損して得取れ」「互恵関係」「お互い様」ではなく、まず自己の利益を追求し、それを続くようにするために、関係する他者も利益がもたらされるようにすること。ここで用いられるenlightenedは、sophisticated /sustainable/smart と同様、今の人間社会を考えるときの重要なkey word になる。


投稿者 磯村信夫 16:04