社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年07月13日

コロナ禍の7月相場の原因予測。花き業界はより一層の健全なサプライチェーンを


 今日は7月盆の迎え火だ。7月盆の相場が、ここ10年で切り花・鉢物ともに最高値になったのは、需要の減少よりも出荷量がさらに少ないということだ。まず、コロナ禍で海外からの飛行機便が大幅に減少した。さらに、国内の飛行機便、トラック輸送便もまだ当てには出来ない。そして、7月に出荷するには、3月・4月から手を入れて作り上げていかなければならないが、ちょうどコロナ禍のパンデミックの時だった。「今年はもう駄目だ」と、生産意欲が減退した生産者も多かった筈だ。様々な要因が重なった結果、需要が少ないにも関わらず、相場が上がっている。これはニューノーマル下の新しい動きと言って良いのではないだろうか。
 
 需要の方を見てみよう。在宅勤務が続き、「花を飾る素晴らしさ」を発見した生活者も多い自粛期間だった。三密を避けるため、リモートで今後とも家にいることが多くなると思われるので、家庭需要は堅調だ。コロナ禍で8割経済が続くが、個人需要を主とする地元の生花店、チェーン展開する駅ナカの生花店、スーパーマーケット・ホームセンターの花売り場、ネット販売等に頑張ってもらい、個人消費を更に拡大してもらいたい。一方、東京では、新型コロナ感染者が毎日200人以上になり、結婚式需要はさらに先となるだろう。少しずつ秋から始まるが、半分の規模だという。葬儀も、今までのサイズから一回りも二回りも小さくなり、「県を超えて来ていただくのは申し訳ない」とお知らせしないこともある。従って、葬儀祭壇で、あるいは、籠花で使われる白い菊は、7月盆においても安値となった。また、施餓鬼や法要を行わないことを早々に打ち出すお寺も多く、本堂などに飾る大きな花装飾の需要が少なかった。従って、7月10日(金)に行われたハス市でも、大きいサイズの物は相場が出にくかった。
 
 スプレー菊や小菊の白の値段が高くなっても、白一輪菊は高くならなかった。ニューノーマルの生活様式になっても白菊が使われる量が少ないことが分かる。従って、産地は出荷先の市場と共に対応を検討する必要がある。 また、(オンライン化も始まってはいるが)人が集まることを前提としている葬儀や結婚式は、既存のスタイルだけではなく、それぞれ新たな会場の装飾方法等を模索していかなければ、元の需要には戻らない。冠婚葬祭だけではない。コロナ禍でのリモートの推進による、住環境に対する意識の変化や、ネット販売の多様な在り方等、社会は変化している。これらの需要に対する新しい取組みを、まずは来年のバレンタインデーまで試行錯誤しよう。最終的には2024年、ないし、2025年までが勝負だ。  

 業界内での出来事として、卸・仲卸は数の調整局面にあると思う。その社員や元社員の不祥事で、開設者から休業命令が出ることが各部類で起きている。日本全体で倒産が増えるのは、秋口ごろからと言われているが、今期に入り、生産者や生産会社の倒産はあったが、卸・仲卸では、現時点では不祥事での営業停止どまりだ。これが金融機関にまでコロナ禍のマイナスが及ぶとなると、卸・仲卸や小売、そして、生産者も倒産が増えていく可能性がある。一般的に、「企業は月商の二カ月から三カ月のキャッシュを持っておく」という鉄則がある。しかし、今度のコロナ禍では二、三カ月では済まないのだ。政府や地方自治体が面倒を見てくれている訳だが、それも立ち行かなくなるということだ。  

 最後に、コロナ禍であっても、経営の基本である「環境」、「社会性」、「企業統治」の三つの力を持った会社が「良い会社」と言われる。そこで頑張っている産地、流通業者、小売業と取り組む必要がある。各社とも苦しい経営の中であろうが、その会社がどこにポイントを置いて仕事をしているのか。よく見てサプライチェーンを組んでもらいたい。それが、日が差さない今、やるべきことである。

   

投稿者 磯村信夫 16:00