社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年01月06日

グローカルではない。ローカルの発達がユニバーサルだ


 年末年始は新潟県妙高市で過ごし、街を観たり、地元の方々から示唆に富む話を伺った。その話は、薄々感じてはいたが、しかし、真剣になって考えてはこなかったことへの解であった。「ここ(妙高市)でもご多分に漏れず、バイパスが通り、ロードサイドにショッピングセンターも出来た。また、その周り近所も、全国チェーンの見慣れた大型店舗がある。そして、街の商店街はシャッター通りと化してしまった。『アメリカのように車で移動し、郊外のショッピングセンターまで行く』。こういった街づくりを、80年代から90年代半ば頃までの政策として、国交省と経産省が指導してきたためだ。」というのである。そうだとすると、この政策は的確に実行されたものだと思う。

 仕事の関係で日本各地に行くことが多いが、日本はいつのまにかアメリカのような車社会、また街づくりになってしまった。昔の繁華街は、シャッター通りのところが多い。一方、ヨーロッパは人口3万人、5万人の市であっても、古くからある街のセンターには、車を降りて歩けば、買い物する場所、教会や市庁舎、広場がある。建物の中身は時代とともに変えても外観は変わらず、言うなれば“歩行者天国”のように、徒歩で行き来が出来るのだ。そして必ずベンチがある。ゆっくりできるのだ。何故、日本は自分の住んでいる街の思い出に残る中心街、繁華街を残さなかったのだろう。それはきっと、経済成長こそが全てを解決するという思考だったのではないだろうか。成長ではなく、経済の定常化等に、あるいは、人々の平和、幸せというものに価値基準を合わせ、政策を行わなかったためではないだろうか。
 
 今後、日本はますます少子高齢化や人口減があり、生産も減る。小売店も少なくなる。そして消費も減る。首都圏は団塊世代の会社リタイアで地方から若い人が流入し、人口が減らずに済んでいる。しかし、交通網が発達し、ネット社会の現在、地方に住んでいても、不便さはあまり無い。従って、地方に移り住んだ方が、実は、自然を身近に感じながら、幸せな生活が出来るのではないだろうか。バランスの取れた人口配置をしているドイツのような人口分布こそが、心豊かな国としての政策なのではないだろうか。また、このような形になっていかないと、花や緑の活躍場所が限定されてしまう。もう一度、ヨーロッパ、特に、ドイツやオランダ、スカンジナビアの国々に学び、国の政策も切り替えていくべきだと、妙高市で感じたのである。
 
 卸売市場法の改正もある本年以降、卸売市場としての大田花きは、ローカルの時代への移行期であると考え、地方の中核市場を応援し、品揃え等で地元の生活者に満足してもらえるよう助力していく。大切なことは地産地消と、地元に合う花を自力で揃えるだけの力だ。すなわち、地元の中核市場としての独立である。ローカルが発達しグローバルになる。あるいは、グローバルという言葉が上から目線なので、ローカルの活性化がユニバーサルに通ず。この認識で、地方中核市場独立へのお手伝いを、卸売市場の数の調整局面と向き合いこの5年で、行って参りたいと思う。
 

 
投稿者 磯村信夫 16:58