社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年06月28日

ガバナンスの充実と、業界繁栄に努める


 大田市場では、仲卸さんが輸出を行っている。そのお手伝いを卸は担っているが、香港の大手問屋の元気が無い。この先を考えていると彼らは言う。

 先週末、香港の「リンゴ日報」が実質廃刊となり、香港の「言論の自由」が大きく後退する事態になったと、メディアは報じている。私はこのことで、哲学者・ヘーゲルの言った「所有は自由。自由は所有」。この言葉をつくづくかみしめている。

 その週末、大田花きでは、第33回定時株主総会を開催した。その中で、株主からいくつか質問をいただいたのだが、ここで2つの質問を取り上げたい。まず1つ目は、「大田花きの取締役が大田花きの株式を持っていない人がいるのは何故か」という質問だった。この質問に対しては、会社の執行体制を知ってもらい、理解を求めた。  

 大田花きは指名委員会等設置会社であり、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の三つの委員会が設置されている。この委員に取締役が就任し、経営の監督を行っている。そして、社内の執行役が業務執行を担う。経営と執行を分離させているのだ。取締役への情報提供は、取締役と執行役との合同会議でもなされるが、もう一つ、大田花きの内部監査室2名と、管理本部の執行役に就任していないナンバー2の人間、そして、取締役も兼任している私の計4名が、取締役との情報交換、意思決定を日常の中で行っている。また、私以外の取締役は社外の人間で、常勤していない(私の息子である磯村隆夫が取締役メンバーに就任しているが、彼の本業は他社のゼネラルマネージャーである)。この社外の取締役と、取締役でもあるCEOの磯村信夫が検討を重ね、人事、給料、コンプライアンス、会社の「こうあるべき」という夢、その年度の数値目標を定め、ものによっては執行役から上がってきたものを承認し、執行役へ命じているのだ。そして、執行役が実際に業務を執行する権力がある。  

 さて、1つ目の質問に対しては、「大田花きの取締役は、いうなれば『社会』です」と申し上げた。イギリス・アメリカと同じ、取締役、執行役の形を大田花きは敷いているが、「会社は株主の物」であるイギリス・アメリカ型ではない。「社員の物」だという日本型だ。日本は(口幅ったいが)天皇陛下の権威と内閣の権力、これを分けて統治をしている。タイも同様だ。前タイ国王は、クーデターなどの政治的混乱が起きた時も、権威の象徴として国の安寧秩序に努められた。権威と権力を分力して運営していくことは、日本の良さではないかと考えている。大田花きもこのスタイルを敷いているのだ。そして、役員は善管注意義務と忠実義務を負う。もし執行役で公私混同やら忠実義務違反等があった場合、取締役は初めて「権力」を行使するが、基本的には、「権威としての取締役」と、「権力としての執行役」とに分けている。従って、取締役は社会そのものであるので、株式を沢山持っていただいてもよし、持たなくても、取締役として大田花きを導いてもらいたいと考えている。  


 長くなるが、もう1つここで取り上げたい質問は、「コロナ禍後、花の家庭消費が振るわなくなるのではないか」。というものだ。ヨーロッパでは、我慢の反動で様々な消費がなされ、花の売上げが減っている。また、今後とも減るのではないかと懸念されているそうだ。一方で、来期予想で大田花きは黒字の見通しを立てている。大田花きは社会インフラとして、列車のようなものだと思っている。定時に決められた乗客を運ぶ鉄道運行は、コロナ禍でも欠かせない。大田花きも同様、コロナ禍で冠婚葬祭の乗客が少なくなっても、定時運行は欠かせないのだ。花き業界のインフラとしてサービスを落とすわけにはいかないので、今期は赤字を計上した。ご質問頂いた方からすると、来期の見通しが楽観的すぎるのではないかと、今後の日本の消費動向を心配してご質問をいただいた訳だ。私は、こう申し上げた。「花のネット販売、サブスクリプションは、今まで花を身近に置かれていなかった方が多く利用されています。アフターコロナで、『今まで我慢していた消費の反動が』と言うことも確かにあるでしょうが、ヨーロッパと違い、新たな需要が芽生えています。特にサブスクリプションでの一般の家庭への花の供給は、底堅いことを前提に見通しを立てて良いと判断しました。今後の花き業界は新たな発展をするものとみています」。  

 サブスクリプションは、特に若い方たち、注目のZ世代やミレニアル世代の方たちにしっかり届いている。お花屋さんで花を買うことは、まだ敷居が高いかもしれない。また、スーパーの花が魅力的でないと感じる人がまだいるかもしれない。しかし、これらを今後、更に改善を行って、花き業界の繁栄に努めたい。  


投稿者 磯村信夫 16:29