社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年10月29日

アジア発展の時代、生鮮品を作る農家と小売店の地位向上のため、卸売市場システムを定着させる


 この11月、台湾の花き輸出団体に招かれて台中と台北に行く。私の母が基隆市(内陸にある台北とはちょうど東京と横浜のような関係の港街)の女学校を経て、敗戦を期に日本へ引き上げてきたので、私にとって台湾は大変近しい感覚だ。そしてもちろん、台湾の花き業界の方々とも交流を深めている。例えば、元万国貿易の柳川さんは(今は足がお悪く、活発に外に出て行くという訳にはいかないが)、台湾から明治学院大学に入学。卒業後、日本に初めてタイのデンファレを輸入した方だ。柳川さんとは今でも本当に親しくさせていただいている。私の父・民夫が亡くなった時には、葬儀が終わるまでの間、ずっと私たち家族と一緒にいてくださった。柳川さんは当然、台湾の花き業界にも詳しく、また同様に国策会社である台湾製糖の、国の農業関係の中枢の人達とも繋がりが多い。台湾農業や花き輸出、更に、卸売市場行政をどうするか等、心を砕いて政策のアドバイスをしたりしていた。

 私もまた、台湾の卸売市場行政についてアドバイスをさせてもらったことがある。 例えば、台北花市場の方にアドバイスを求められた際、世界の「販売手数料」の扱い方の歴史をお話しした。現在、台湾の卸売市場では、出荷者と買い手の両方から手数料を頂くことにしている。また、台湾だけでなく韓国も、手数料の頂き方は少し違うが、日本が統治していたころの市場システムが基本として残っている。そして特定の産地は日本に輸出するだけの力をつけている。では、アジアの中で日本が統治していた国以外はどうだろう。

 台湾の花卉園芸業者に話を聞くと、「市場があるから、生産者はより良いものを作ろうと努力する。街にこれだけ花がたくさん使われているのは、小売店もデザイナーもスーパーの花売り場も、市場に行けば多種多様な花を適正価格で品揃えが出来るからだ。市場が消費拡大に大変役立っている」と仰る。

 日本の生鮮食料品花き産業における活性化は、その流通において卸売市場が機能していることによる。大田花きは、日本が位置するアジア地域に卸売市場システムを構築し、それぞれの国の生鮮食料品花き生産と消費の繁栄と安定へ寄与したいと思い、力を入れている。台湾のように自国で力をつけて、余剰が出てきたら、競争力がついてきたら輸出を考える国もある。アジア諸国は、一部の品目や特定の業者を除いてその前の段階である。アジアの発展はこれからだ。そのお手伝いをしていきたい。

 
投稿者 磯村信夫 16:46