社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年03月14日

やっぱり花も、国際商品は高止まり


 3月に入り第11週は、カーネーションが例年になく高い。2月に中国の雲南省で雪が降ったため、赤のマスターの入荷が少ない。世界中で天候がおかしく、現在夏のオーストラリアも大洪水がある等、ラニーニャだけでなく、地球温暖化の影響は今後とも続く。中国産カーネーションの「母の日」の契約取引の価格を聞くと、赤で80円以上、100円をオーバーするものもある予定だという。天候異変だけではない。コロナ禍で人の移動が出来ず鎖国状態になっていたり、飛行機便も減って航空運賃が上がり、船輸送では更にコンテナを消毒したり、色々なことをしなければならないのでコンテナが潤沢に回ってこない。様々な業界が影響を受けているが、農産物の輸出入についても例外ではない。コロナ禍における運賃高や人手不足は本当に大変なことになっている。

 お彼岸の需要期に突入した。お彼岸期はお墓参りやお供えを行い、ご先祖様を想って感謝を申しあげる日だ。コロナ禍で法事や冠婚葬祭の事業が縮小・簡略化されたりしているので、親族とは今まで通りに会えないことも多いだろう。我々日本人は、自分が接していた父母、祖父母までは死後、霊となり奥山に住いし、しばらくしてから御霊だとか、ご先祖様と一緒の霊体になる。その霊に会うのが盆と正月なのだが、そればかりでは寂しいので、お彼岸にもご先祖様に会い、「今後とも見守ってください、私たちも一生懸命やります」と自分自身、強く生きていくことを誓う。例えば私が農業を(特にお米の生産を)やっているとしたら、そのご先祖様の霊は“農の神”だとか、“作(さく)の神”だとかになる。そして農作業の始まりから収穫まで、つまり春の彼岸から秋の彼岸まで、有為の奥山からこちらに来て我々を見守ってくれて、秋の彼岸から奥山に帰っていく。有為の奥山に向けての道筋にお墓があるから、人はお墓参りに行く。こんな風に、仏教というよりも日本人が持っている死生観、先祖に対する考え等、お彼岸にやっているのだ。今度の彼岸も、出来れば家族でお墓参りに、雪が深くて墓参りが難しければ自宅でお供えを行い、ご先祖様、親戚へ感謝の言葉を伝える機会にしてもらいたい。

 さて、今年の彼岸期は、先述した天候異変とコロナ禍での人手不足・物資不足に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻で、ガソリン、液化天然ガス、希少鉱物、小麦等、国際商品の価格が高くなってしまっている。花で言えばカーネーション、バラ、キク、ネイティブフラワー、鉢物ではファレノや観葉植物等、まさに国際商品の価格が高止まりしている状態だ。これが「今までより高いのはやむを得ない」としてそれなりに流通し、価格がそこそこ落ち着いたなと思われるのは、年を越してからだろうと言われている。従って2022年は、この国際商品を中心に高止まりする状況が続く。石油や肥料、ハウス施設、家畜であれば飼料作物等、そういったものが全て高くなるから、これを前提に、割安に感じられるように花持ちやデザインの工夫、時代に合わせた品種や色にしていく等の努力をして、値が上がったことについて、消費者が手を引っ込めるのではなく、それでも買ってもらえるような仕組みづくりが大変重要だ。

 「変革期」というよりも、この混乱した状況で周りをしっかり見据えて、落ち着いて対処したい。花も例外ではない。国際商品は値が上がるので、種苗、生産、流通、小売の業界全体で工夫し、消費者に花を買ってもらえるようにしていきたいと思う。



投稿者 磯村信夫 16:26