社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年03月19日

もう、だまっていても売れない彼岸用の花


 人は、“モノ”と“コト”にお金を支払う。消費者は、モノ(=花と緑)をお金と交換し、自分の課題を解決する。素晴らしい結婚式にするための装飾や、お客様をもてなすために、自宅に飾る花等である。このような“モノ”の大切さから、大田花きでは、情報システム本部所属だった品質カイゼン室を、部署ごとロジスティック本部へ移動した。より現場に近いところで、“モノ”である商品の品質管理を全般に考えてもらうためだ。

 休暇と重なるお正月やお盆は、花の需要がしっかりある。しかし、春・秋の彼岸は何かと忙しい季節で、祝日も一日だけだ。皆さんも、周りの近所の若い方に“お彼岸にお墓参りへ行くか”と聞いてみて欲しい。“行く”と答える人の少なさに驚くだろう。また、彼岸に「入り」や「明け」があるのを知らない人の多さに驚くだろう。

 今、社会の中軸となっている団塊ジュニアの人々からすると、「彼岸」とはお中日の1日だけのことで、両親のどちらかが亡くなっている人はお墓参りに行くが、両親が健在の人は彼岸に墓参りするということが殆ど無くなっている。これは、何も東京だけのことを言っているのではない。日本中で核家族化が進み、起きていることなのだ。現在の花消費の主体である団塊ジュニアを中心とした、37、8歳から54歳までの人口ボリュームゾーン、ここに、お彼岸の意味を教え、お墓にご先祖様を、あるいは、仏様を拝みに行き、自分の現況を報告するという文化を伝えて、お墓参りをしてもらうきっかけにしたい。弊社品質カイゼン室が、少なくとも、お中日までには、「お彼岸」についての記事をホームページにアップさせる予定だ。花き業界は売らんが為に、彼岸をプッシュしているけれど、常識で考えても、お彼岸の需要基盤は年々弱くなっている。もし、これを確固たるものにしたいのなら、文化の伝統、お彼岸のお墓参りの風習をつたえていくことが必要だ。

 日本人は周りの「空気」に影響され、判断し、行動する。学校や会社での集団、ママ友での集団等、そこでの考えが重要となる。フラワーバレンタインデーも、会社の女性達に花を贈る男性が増えればブレイクする。もちろん、チョコレートをもらった時はホワイトデーもだ。こういう風に、集団依存主義的なのである。この「空気」をどのような形で形成し、お彼岸にお墓参りをしてもらうか。団塊世代、バブル世代にとっては、日本の伝統が世間の「空気」となっている。しかし、それ以下の世代にとっては、世間が違う。ましては、盛んにシェアしようとするミレニアム世代を中心とした人たちは、もっと違う。ここに、どのような形で伝統文化を繋ぐか。自分が今いるのはご先祖様のお陰、仏様のお陰であること。また、仏教の〝因果応報“において、ヒトとして生きていけるのは有り難いことなのだということを認識し、そして、明日に向かって生きていく決意を報告する「お彼岸」の重要性に気付いてもらいたい。

 花き業界で働く人たちよ、「まず隗より始めよ」。子どもたちの新しい門出があったり、転勤や引っ越しがあったりするかもしれない。しかし、忙しい中でも、仏様、ご先祖様へ報告し、見守ってもらえるようお願いしよう。花を持ってお墓参りしよう、また、樹木葬ならば、そこへ行って、誰にも迷惑をかけない、また土に還る花や木々に手を合わせてこよう。まず、友達に語り、そして、実践する。それが、お彼岸に向けての我々業界人の対応ではないか。


投稿者 磯村信夫 18:21