社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

[]

2021年11月08日

まず時間の確保


 先週、2つの経験をして「なるほど」と思った。1つは薬のことだ。朝早く出かけた際、薬2種が入った袋をどこかで無くしてしまった。困るので翌日病院で薬を貰おうとしたら、診察を受け直さなければならないという。さらに、その分の薬代は、健康保険が適用されない。薬剤費の増加を抑制するため、「残薬問題」への対応策か、薬の無駄遣いで政府の負担が増えすぎて、それをチェックしようというのだろうか。調剤薬局で薬代を支払うと、日頃支払う料金の3倍から4倍くらいの感覚だった。え、薬ってこんなに高かったのか。これでは高齢化社会で、今後とも国家財政は大変だ。政府は今後どのような形で財政を健全化させていくか。私もアイディアは無いのだが、とにかく大変なことだ。

 2つ目は、旅行先で感じたことだ。一昨日、久しぶりに伊豆高原へ妻と行ってきた。翌朝に伊東の街を見ようと、妻を置いて私一人でホテルを出た。小学校の時、特に夏休みに、母方の両親がいる伊東で過ごしたことがあり、大学の頃まで度々行っていた懐かしい場所だったからだ。その頃と比べると寂れたなぁと、思いながら町を歩いた。『湯の町エレジー』ではないが、その時代とはもう違うようだ。海があり、漁港もある。夏には花火も打ち上げている。だが、近日はリゾートのつもりで温泉にいくので、温泉街ではもうないようだ。特にアーケード街から山側に飲み屋さんがあるが、それはことさら、コロナ禍の影響もあり寂れていた。一方、伊豆高原では、海と森がある。しかも、広々として散策できる。温泉宿といっても、露天風呂がみんな好きなように、自然に恵まれた環境が必要なんだろう。伊東温泉を利用した年代層と、伊豆高原の宿屋やオーベルジュに来ている人を比べると、伊東は年配者ばかりだ。今後、伊東をどのように盛り上げていけばよいか。これもアイディアは浮かばないが、どうにか盛り上がって欲しいと思いながら、祖父・祖母のお墓にお参りしてきた。

 このように、休みを利用し色々なところを見たり、人から聞いたりするのは勉強になる。時間の大切さをつくづく感じるが、これは仕事も一緒だ。リアルにしても、ネット上にしても、消費者がサービスや物を買うその瞬間の情報を知っておくことが大切だ。カード決済等が中心になり、会員カードをみんな持っていることが多い昨今、誰がどのような消費行動をしているか、時間の使い方、お金の使い方が分かる。マイナンバーになったらもっと色々なことが分かってくるだろう。Amazonは生鮮食料品スーパーマーケットを買収したが、食生活ほど、それぞれのカテゴリー、例えば出身国や人種、宗教、年齢、男女、所得水準、住んでいる地域の文化、どこの会社に勤めているか等々が顕著に現れるものはない。花も、花の買い方、プレゼント等の使い方、家の仕様がエスニックかウエスタンナイズされているか等によって購入する鉢物類も違うだろうし、ガーデニングをやる・やらないにも影響する。

 生活雑貨等を販売する大手企業が、花も扱うようになってきている。もちろん、スーパーもホームセンターもだ。そこがDXで「真実の瞬間のデータ」を取り、これに季節と天候を掛け合わせ、将来の販売予測精度を高めている。街の小売店は、こういった大手企業と競争しなければならない。小売店がデジタルにしても、あるいは、アナログでも良いが、会社でデータを取り、そこから戦術的に仕入、商品化出来れば良いが、中々難しい。従って、花き業界では比較的規模の大きな卸売会社が買い物履歴を編集した情報を産地に伝え、また具体的な生産情報を切り花や鉢物と一緒に小売店にも的確に卸すことが必要だ。産地や小売店のためにも、生活者が、消費者として花を買うとき、ここをおさえてサプライチェーンをバリューチェーンに、バリューチェーンをバリューサイクルにする。このために、卸売市場の社員は時間を作って小売りの現場に一緒になって立たなければならない。これはとても大切で、いくつかの仕事の手を止めることになっても、時間をそこに使う位、優先順位の高い仕事だ。   




投稿者 磯村信夫 17:18