社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年05月24日

どんなポジションでも努力する


 昨日、近所に住んでいる小学校時代の先輩と、「コロナ禍の葬儀の形態がこのまま続くのではないか」という話になった。もう一人、近所で印刷関係の仕事をしている方とも、大田市場の側にある葬儀場「臨海斎場」での葬儀の様子について語りあった。「香典だけ置いて帰る訳にもいかないのでお参りして帰ろうと思ったが、家族の他に誰もいないので、結局、その日は最後まで会場にいることになりました」。  

 東京では、二日間にわたって葬儀を行うことが珍しくなり一日葬が多くなった。「亡くなったからお葬式はいつです」という連絡ではなく、「葬儀を相済ませました」という連絡が目立つ。更に中には、葬儀社や互助会自らが花の仕入れまで行うところもある。生産者は、葬儀が今後とも家族葬がメインであることを前提に、品目・品種や当階級を考えた作付けが必要になる。

 そんな冠婚葬祭においても需要の変化が著しい昨今ではあるが、世界の中で、日本はまだまだ頑張れる国であることを伝えたい。最近拝読した『世界のニュースを日本人は何も知らない2(谷本真由美氏著/㈱ワニブックス/2020年12月)』からの孫引きとなるが、二〇一八年に世界銀行が公開した「世代を超えた各国の教育と経済の流動性」というレポートによれば、子どもが親世代の階層を超える国の一位がキプロス、次にデンマーク、イギリス、スウェーデンが名を連ねており、なんと日本も六位にランクインしているそうだ。そう、日本は世界でもっとも成り上がりやすい国の一つなのだ。一位のキプロスは地中海に浮かぶ、イタリア近くの島で、英語を話す。私のオランダの友人の奥さんが、たまたま当時のキプロス大統領の妹だったので、キプロスのことをそれなりに知っているのだが、英語学習の教育を受けるため、海外からキプロスへ多くの人が留学している。日本人も多く、中にはドイツ人や北欧人等も英語を習いに来ていると友人は言っていた。そのような教育関係からはじまり、観光、そして全体の知的レベルを上げるための教育がキプロスではなされているのだ。  

 さて、「成り上がりやすい国」6位が日本とのことだが、私自身は「本当かな」と内心、思ってしまう。もう50年も前だが、私が学生の頃、大学生で車のグレードが一番高かったのは東大だった。東大に進学する人は、東大卒の親や親戚がいて、一定に裕福。そんな人たちが中心に東大に入っている印象を受けた。東大に通う学生の車のレベルが私学と違うことにびっくりし、「ああ、もう日本も階層化してきたな」とその頃思った次第である。しかし先述した本によると、日本では、中級以下の下位層の両親に生まれた子どものうち、十八%が階層を移動してトップ階層に上りつめているというのだ。これは他国よりも公的教育のレベルが高く、費用も安いから、そして、職業差別や階級差別が圧倒的に少ないからだと著者は指摘している。これは日本の素晴らしいところだ。こんなチャンスのある国はそんなに無い。しかも、学歴重視の国が多い中で、日本は世界に比べればそこまで重視されない。従って、せっかくこの日本に生まれてきたのだ。大学や大学院に行かなかったとしても、また行っていたとしても、その先の社会人になってからも、必ず私生活で勉強をして、どんな職業でもその道の一流になる。この気持ちで努力することが大切だ。  


投稿者 磯村信夫 16:02