社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年04月17日

ただ今ダウントレンド、その中でどうするか。


 今年の採用試験は、人手不足感もあり、早めに内定を出す企業が多いと聞く。会社は最終的に“人”であるから、どこの企業も良い学生を迎え入れたいだろう。採用面接をしていてつくづく思うのは、今の学生たちは確実にレベルが上がっているということだ。これは、自殺者の減少、また、25歳以下の青少年犯罪が減少していることからもわかるとおり、日本の社会が良くなってきた為だろう。日本電産社長の言葉に、「能力差は5倍でも、意識の差は100倍まで広がる」というものがある。人は見ようとしたものしか見えないし、聞こうとしたことしか聞こえない。どの仕事を選ぶにしても、誇りを持って、また、問題意識を持って生きていく。きっとそこに、採用試験の合格も、事業の発展、国の発展もあるのではないだろうか。

 現在、日本では約130万人が亡くなって、約100万人が新たに生まれている。そして、首都圏と沖縄、愛知、福岡の人口が増え、都市部とそれ以外の人口格差が広がり、特に東京一極集中が続いている。大都市といえども、人口を吸収するだけの魅力的な仕事がまだ育っていない。関西の切花・鉢物の需要動向や相場を見ると、人口が増えていない分、市況が下がってしまい、結局、卸売市場は関西圏以外の消費者を求めて荷を分荷しないと、適正価格を生み出すことが出来なくなっている。従って、関西地方には、これから日本が打って出る産業になる医療、健康、アンチエイジング関連産業に、早く大きくなって貰いたいと思う。本格的にいくつも会社をおこし、求人数を増やし、人口を増やしてもらう。そして、富を循環させてもらいたい。

 日本の花き市場では、価格が前年、二年前、五年前より安い市況が1月から続いている※。切花においては、冠婚葬祭、仏花に頼りすぎていた為に、菊類の相場が安いと、切花全体の相場が安くなる。また、主としてスーパーマーケットの切花売場、ホームセンター等の量販店での鉢物・苗物売場が、特に物日には消費者にとっての頼りになるお買い場となった為、物日の前後はトータルの売場面積が縮小する。物日に買うと、切り花でもその後一週間は花が持つから、買う前の一週間前と、買ってからの一週間は売れにくい週になるのだ。

 一日三回腹が減り、週に二十一回、必ず一定の消費量がある野菜と、大の花好きでも、切花で一週間に一回、鉢物で一ヶ月に一回の販売チャンスの花きでは、週間商品回転率の違いは、一人世帯で21:1:0.25だ。この市場規模の違いがある。このように、野菜よりも商品回転率が良くないので、「鮮度が大切」などと言いながらも、卸売市場の切花市は、月・水・金に集約され、鉢物市も週に二回、多くても三回が精いっぱいだ。しかも、野菜なら、仮にちょっと形が悪くても、カット野菜や給食など、加工用に回すこともできるかもしれない。しかし、花は、失敗作ではお金にならないのだ。

 従って、スーパーやホームセンターでの売場ももちろん大切だが、物日の需要期でない時も、花を変わらない売場面積で販売してくれている専門店が花き業界にとって大切だ。「フラワーフライデー」や「ウィークエンドフラワー」、オフィスに花や緑をの「フラワービズ」。この需要を確実に満たしてくれるのは、専門店が中心だろう。まず、専門店を応援しながら、この需要を掘り起こしていこう。また、そのとき、生産性アップや健康、効能のエビデンスを花と一緒につけて販売して貰おう。(一社)フラワーライフスタイリスト協会殿が、花の様々な効能について取り組んでいる。是非、これを花き業界全体の財産として、効能の科学的エビデンス付き販売を行い、健康志向を頭で考えて買ってもらおう。

 4月18日は「ガーベラの日」で、小売店は積極的にプロモーション活動をしている。子どもたちに花の絵を描いてもらうと、昔はチューリップとマーガレットだったのが、今はチューリップとガーベラだ。明日は日本全国でガーベラの花が展開され、よく売れるのではないか。このように、需要がはっきりしているものを、単価が10%下がったら10%余分に買ってもらう。それが、消費者の喜びでもあり、生産者の喜びでもある筈だ。

 今、花き業界は縮小均衡の状況にある。因果律がはっきりしたものから、解決してやっていくことが必要とされる。業界で出来ることと出来ないことがあるだろうが、消費者に買ってもらうこと、中間流通業者は、消費者に届けてくれる小売店をサポートすること。そして、生産者に需要を増やすから花作りを続けてくれるようお願いし、時がきたら生産拡大してもらうことが必要だ。後は、日本の各地方がさらに活性化することが、花の消費に繋がっていくが、これは直接的には何も出来ないので、地方創生に協力するばかりである。


投稿者 磯村信夫 : 16:50