社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

[]

2019年08月12日

「介護退社」を機に日本の人口動態を考える。


 7月中の涼しさを忘れてしまう程の猛暑だ。8月は盆の需要があるというのに、菊類の安値が続いた。中国産の白菊に値段がつかないこともあった。「理性」というよりもむしろ「群集心理」のような、あるいは、『その品物が手に入らないかもしれない』といった強迫観念や焦りが無いと、相場が上がらないのではないだろうか。菊類は出荷量が段々と減り、相場が普通に戻ってきた。それでも例年より二割ほど安い。このような調子で今週を迎えた。

 さて、この盆需要の忙しさの最中、「介護退社」について真剣に考える時間を持った。というのも、実際に両親の介護で悩んでいる社員がいるからだ。地方から上京した社員は多い。地元に残してきた両親の介護をどうするか。この問題を抱える社員は今後も出てくるだろう。そして「介護退社」について考えるにあたり、地方と東京圏の人口問題も深刻であることが分かった。
 
 東京圏は東京・神奈川・埼玉・千葉で構成されており、2030年を人口のピークに、それ以降減り始めると言われている。しかし、東京圏の中においても、都市部とそれ以外で二極化は進んでいる。これは東京圏だけでなく、中京圏、関西圏も同様だ。東京圏は各地域の大都市から、特に若い人たちを吸収している。女性に人気の第三次産業への就業者比率が、全国平均は70%なのに対し、東京都は10%も多い80%だという。地元で探すよりも自分に合った就職先を選びやすくなるだろう。それゆえ若い女性を多く吸収しているのだ。これが沖縄と同様、人口が増えたり、あるいは、減らない、減るのが遅い理由である。転入率は大阪はじめ、大都市からが多い。花の荷の流れも人口に左右される。例えば同じ23区でも、人口が減りはじめた足立区や多摩地域の市場から都内各所に荷物が運ばれているのが目につく。人口減により地元の花き消費が減少し、荷を受け止めきれなくなっているのだろう。

 「介護退社」に話を戻そう。弊社も地方出身社員が多いが、地方は高齢化率が高く、人口も減少している。上手く介護付き老人ホームに入ることが出来れば良いが、そうで無い場合にはどうすれば良いか。東京圏や地方に住んでいる兄弟で話し合わなければならない。介護は、自宅で介護するか、ホームに入るかしかない。しかし、実際に自宅で介護をするとなると、肉親ゆえになかなか骨の折れることだという。本日も会議で「介護退社」について、社員と話をした。費用やホームの空きの問題もあるが、介護士さんのいるホームに入ってもらい、「介護退社」はせず仕事をしながら頻繁に通う。これが家族の幸せに繋がるのではないだろうか。

 日本は団塊ジュニアが高齢者となる2042年に向けて、本格的な高齢化社会を迎える。そしてその後、急激に人口減少社会となる。その中で、相対的だが、東京圏の花き需要は恵まれている。しかし、東京圏でもちょっと電車で1時間以上の場所に目を転じると、違った現状が見えてくるのだ。どのように花き市場を配置していけば、日本中の各地域で頑張って地元に花を供給している小売店、そして、花市場が、地元特有の花き文化や、庭やいけばな、結婚式やお葬式などの花飾りを、地域の生活者の幸せのために供給し続けることが出来るだろうか。昨日は卸売市場配備につき想いを巡らせる1日であった。



投稿者 磯村信夫 16:40