社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年12月03日

「一緒になって儲ける」意欲と知識、そしてノウハウを持つこと


 花の卸売会社全般に言えることだが、品目担当者のレベルが下がっているように思う。産地や普及員の先生にもそのように言われる。品目担当にしても、産地担当にしても「どうやって生産者にお金を取ってもらえるか」が重要だ。その為には、まず需要の実態を知らなければならない。

 私たち消費者にとって四つの花の小売店の業態が必要だ。一つは、新しい花との生活を提案する専門店だ。花束やアレンジメントにしても、冠婚葬祭の装飾等にしても、TPOに応じた花の料理(装飾)に優れているのが専門店だ。その料理を品目担当者は知っておく必要がある。茶花においては、質素で静かな、不足の美が素晴らしいという「わびさび」が分らなければ、その“一輪”が分からない。文化が分らなければ、素材担当、すなわち、卸の品目担当になるのはおこがましい。二つ目に、花の買い物コストの削減のため、日常の花を割安に購入するスーパーマーケットが挙げられる。特別なものでなくて良い。一定の様式があり、一定基準花もちする買い求めやすい値段の花だ。そして三つ目は、消費者の生活場面それぞれに似合う花を提供するホームセンターの花売り場だ。玄関先のコンテナガーデン用、室内の窓辺の鉢物、居間の壷いけの花、洗面台やお手洗いの花。庭のグランドカバーや木、これらを買いにいく場所が必要だ。最後に、花の買い物時間削減のため、カタログ販売やインターネット花店が挙げられる(実店舗を持つ専門店がネット展開しているところがある)。この四つの小売業態の中で、春夏秋冬、TPOに合わせて、消費者は小売店を使い分ける。

 様々な場所で、用途に合わせて花や緑を購入する消費者。この実態を、年代層や所得水準、地域文化などを考慮してマーケティングする、いわゆる「セグメンテーションマーケティング」を行っていかないと、品目担当や産地担当は生産者にお金を取ってもらうことが出来ない。販売担当もまた、担当する小売店に繁盛してもらうことが出来ない。生産者と一緒になって儲けていこうとする強い気持ち、また、小売店の商売繁盛を願い、一緒に実現していこうとする強い気持ちが必要である。食料品と違って花は易々と消費者に買って貰えないからだ。しかし、最近はこの気持ちの小さい人が多く、知識や物の見方が狭くなっている。

 今、中国や東南アジア各国で「手数料が明確化された卸売市場」を作って欲しいという要望が上がっている。大田花き以外にも、日本の花き市場でそのような要望を頂いているところがあるのではないかと思う。卸売市場を作って欲しい理由としては、その国の花き需要が伸びているため、花き園芸農業者の手取りをより多くするため、小売店が時間まで含めた仕入れコストを下げ、販売に特化して儲けられるようにするためであることが分かる。先週、台湾へ向かい、生産地や輸出協会の方々等とお話した中でも、台湾の卸売市場や輸出協会が、生産者に儲けてもらえるよう、また、消費者により買ってもらえるよう、小売店を応援している旨がよく伝わってきた。
 
 卸の役割は、生産者と小売店の繁盛のためにある。そしてそれを通じて消費者に花を届け、暮らしにうるおいを提供出来る。今のままでは1年、もって3~5年が、園芸農業・花き産業の中で卸売市場が生き残るタイムリミットではないかと思っている。
 
投稿者 磯村信夫 16:31