社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年10月22日

荷が少ない今、しっかり鮮度管理をした「貯蔵」で消費者に花を届けよう


 花き流通においても「貯蔵」が大変重要な仕事になってきた。今年のように猛暑や台風等の天候異変が多いと、前進開花したり、逆に遅れたり、絶対量が足りなくなったりする。それが普段日であれば、ある花材を駆使して何とか素晴らしい花束やアレンジを作ったり、装飾を行うことが出来る。しかし物日となれば、カーネーションやバラ、菊類等、どうしても欠かせない品目の花が出てくる。これを消費者の必要とする時期に合わせて店頭に並べたり、お届けしなければならない。また、本年の7月以降、切花も鉢物も、需要よりも生産量が少ないことがはっきりした。日本だけではない。海外の赤道直下の高冷地はいつも同じ天候だったから、今までは品質が悪くなるとすれば輸送途中の鮮度管理等だろうと言われていた。しかし、これらの産地も天候異変の影響を受けていることが、本年はっきりと分った。需要よりも出荷量が少ないのは花き業界にとって本当に大変な問題だ。従って、産地や消費地での「貯蔵」が必要となってくる。鮮度管理貯蔵して、消費者の欲しいときにお渡しするべきだ。

 花き流通における「貯蔵」は何通りかある。一つは、産地で採花し貯蔵、その後「貯蔵何日したもの」として出荷され市場で値段が決まり、店で売り出される。二つ目は、産地で採花後すぐに出荷されるもの。時期が早く貯蔵の費用もかかるので、コストに見合った一定の価格で取引される。買い取った業者(水産では卸売市場が下請けする)が貯蔵し消費者が欲しい時期に販売する。産地が貯蔵するのか、あるいは、消費地で買い手が貯蔵するのか。どこで誰が何日貯蔵するか、責任を何所がどう持っているかを分かるようにすることが業界ではとても大切である。

 花は食べ物ほど強い欲求で消費してもらっているわけではない。花はそこに飾っている物が無くなって初めて「何か淋しいな」、「あったほうが良い」と気付かれるものだ。これは身の回りにある自然と同様である。消費者は潤沢に出回っている花々を見て、香りを嗅いで「欲しい」と思い購入する。まず供給が必要なのだ。そして、花は「食べてしまって終わり」ではない。消費者の手に渡ってから切花であれば一週は日持ちするよう、鉢物であれば少なくとも一ヶ月は楽しめるよう、鮮度管理貯蔵・流通をする必要があるのだ。

 供給が少なくなっている今、どう流通させ、どう花材を使えば生産者と消費者の為になるかを明確にし、実行することが求められている。「貯蔵」はその一つの手段として重要な仕事である。生産された花を大切な業界の資源として無駄にしないよう、消費者にしっかり花をお届けしよう。そして、第二の創業の決意を持ち、嘗て二十世紀末に実現した金額である、市場流通計五千億円を超える規模で生産流通させよう。

 
投稿者 磯村信夫 15:33