社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年04月16日

業界建て直しには、プロの料理人である専門店の声を反映させる


 昨日15日は、アクアラインの通行が規制される程の強い風と雨だった。入場者数が心配されたが、(一社)JFTD主催の「フラワードリーム2018 in 東京ビッグサイト」二日目は、盛況のうちに閉会された。本年のフラワードリームも、業界人のみならず、花や文化に関心のある方なら、その質の高さに驚いたことだろう。2月に開催されている、素材品評会である「関東東海花の展覧会」のレベルを凌駕した素晴らしいイベントだった。時代のトレンドに合せたものや、もっと、美の本質のみを表現したもの等、素材そのものを生かしながらも、巧みに調理された作品たちが並んでいた。

 日本のフローリストの平均レベルは、世界のフローリストの平均レベルよりも高いのではないか。それは、例えば、JFTDメンバーの「母の日」向けの作品作りのように、高いレベルで作りこんだJFTD商品の「均一性」に表れている。会員メンバーの技のトレーニングも大したものだ。今後とも、業界をあげて応援をしていきたいと思う。

 フラワードリームの会場にいらっしゃったJFTDのメンバーに、最近の商売の調子を聞いて回った。すると、地域の専門店が閉店していく中で、量販店の花売り場に流れる人もいるが、それでは満足出来ない人が自分のところに来てくれて、お客さんが増えたという声も多かった。一方で、「利益が出て有り難いが、花の単価が下がっているのが心配だ」という声もあった。

 これは13日(金)、葛西の東京フラワーポート㈱主催の勉強会で私がお話ししたことだが、現在の花の安値には三つの理由がある。全国レベルでは、閉店した花屋さん分の売場面積を、量販店の売場面積では補完出来ず、仏花素材を中心に、荷余りが多くなったことが一つ挙げられる。二つ目は、団塊ジュニアが消費の中心となる中、都心の一流花店が、新しくカジュアルブランドを作り、チェーン展開しているが、そこで使用される素材は、まだまだ供給量が足りない。すなわち、品目の需給のミスマッチが起こっている。三つ目は、一昨年の下半期から、生産地、輸入商、花束加工業者、大手業務店等が、卸・仲卸を抜いて直接取引をしたことだ。この結果、実需者に価格競争で売りに走り、市場価格が滅茶苦茶になることがあった。これは昨年の9月以降、全農・系統農協の新しい出荷販売方針があり、ようやく卸売市場を通す本来の大宗の形となった。以上三点が、花の安値の理由の主な原因だ。そして、収益という観点では、生産者、輸送会社・卸・仲卸の手取りの少なさは目に余る程である。縦箱輸送や縦箱販売でのコスト、また、増えすぎた品種の分ロットが多く、更に小分けを行い取引単位が益々小型化した結果、人手不足の中で、手間をかけた割に単価が上がらなかった。これも、業界の構造的な問題だ。

 料理の世界で例えれば、小売店や花束加工業者は「料理人」である。安定供給出来る素材で、味付けのレパートリーで、あるいは、取りあわせで、和食、イタリアン、中華等々、それぞれのカテゴリーのものを作ってもらう。そうすれば、一年間で何千種も新しい品種が出るとか、市場でも、その品目担当しか知らない品種があるといったことは無くなる。少なくとも、料理人に選んでもらえない物を作っても、消費者には届かない。届くとしても、コンテンツが分からないから、選ばれず見過ごされて安値になり、評価されないまま消費者の前に並べられる。生産者の苦労は報われない。需給のミスマッチを無くすため、消費者の欲しい商品を作らなければならないのだ。(一社)JFTDでは、フラワードリームの中で、消費者の代弁者として、素材を生かした料理でもっと美味しく、沢山の消費者に喜んでもらう為に、料理人として何をするか、どういう物を作るか。何が必要か。生産者や関連資材業者に知ってもらうことを、一つの目的としている。

 魚と同様、花や緑の消費が減っている。一方、肉と野菜の消費は増えている。生鮮食料品花き流通の中で、魚と花は一緒だろうか。2014年に花き振興法を議員立法で成立してもらった目的は、花や緑は、人々の生活に欠かせないものであり、少子高齢化で人口が減っても、その需要が減らない可能性、むしろ、増える可能性があるからだ。では、どうすれば良いか。専門店の声を聞き、先述した四つの低迷の鍵を改善すれば良いのである。そうすれば、再び消費と業界は甦る。

投稿者 磯村信夫 17:20