社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年01月29日

有機体として地方都市が活性化することが、花の消費に良い影響を及ぼす


 日本農業新聞の一面右下にある、切花と青果、果物の「日農INDEX」を、いつも楽しみにしている。日が長くなってきたせいか、生産量が確実に増えているトマトは、青果の中でも例年並みの相場に落ち着いてきたようだ。しかし、他の品目は相変わらず昨年に比べ高いものが多い。

 そこへいくと、22日(月)の降雪で、切花は過去五年で最も安い値段となってしまった先週だった。青果の高値が影響し、寒くて花もちの良いことも手伝って、花の買い控えが起きたのだ。嗜好性が強い切花や鉢物は、このあたりに販売の難しさがある。花の小売会社を経営するにしても、定期的に花束をお届けするような仕事をしたり、鉢物なら、季節の花を月一回、自宅へ届けるサービスを展開する等、とにかく待っていては駄目で、何か安定的に入る仕事を作らなければならない。他にも、生け花やフラワーアレンジメントのお教室をする。これも定期的だ。それ以外に、結婚式のパーティーや葬儀、法事等の仕事花を取っていく。このように、複合的にやっていく必要がある。

 日本では戦後、1948年の優生保護法で、それまで禁止されていた人工妊娠中絶が認められ、少子化の方向へ舵を切った。そして、1990年代、日米通商交渉の中で大店立地法が出来、地方都市にも大型店が出店され、商店街に閑古鳥が鳴くこととなった。日本はもともと、地方都市がいきいきとしている生態系を持つ国だった。それが戦後、特に、この二つの規制緩和が原因となって、大都市圏と地方との格差が広がっていった。

 今、三十代の人達を中心に、大都市から地方都市へ移り住もうとする動きがある。この流れを加速化しつつ、地方都市が頑張っていくためには、農業や農産物流通、そして、加工の分野で、女性が、そして、高齢者が働きやすい環境を作ることだ。また、地元の街の中でも、どこに人口を厚く集めるか等、行政府の取捨選択が欠かせなくなっている。

 花は嗜好品である。それは、衣食住の強い欲求の段階では、花の必要性が自覚出来ないからだ。しかし、自然と文化は、人として生きていくために欠かせないものだ。無くなった時、初めてその必要性に気付く。今、人々は気付かないから、我々が気付かせる必要がある。そのために、「花きの振興に関する法律」で予算を頂いている訳だ。花の生産から流通、小売りまで含めて、花き産業は衰退期に入ったかというと、決してそうではない。一部の専門店や花き団体を除き、花の必要性を気付かせる活動をしてこなかったし、活動の重要性を業界全体が感じてこなかったのだ。

 日本で国内消費者を相手に、物やサービスを供給しようとすると、買って貰うのは大変難しい仕事となっていることは事実だ。ただ、どんな人でも解決しなければならない問題を抱えながら生きている。その解消剤として、花を使ってもらうことが出来る筈だと思う。何でもそうだが、良いと思った方策を選び、それにしたがって努力する。その結果、地域社会がいきいきとしたものになり、日本全体が良くなっていく。出張や休暇で地方に行くたびにそう思うのである。


投稿者 磯村信夫 : 14:28