社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年04月23日

先週の出来事から近未来を予測


 4月、5月と、総会や週末のイベント等があり、ゆっくりと行楽という訳にはいかない時期になった。本日は、先週にあったことやイベントを、いくつか話題に取り上げたい。

 3月6日、国会に上程されていた卸売市場法と食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案だが、いよいよ、衆議院の伊東農林水産委員長の下、審議される運びとなった。先週20日(金)、衆議院農林水産委員会の方々が大田市場を視察され、「卸売市場法の一部改正で何か心配なことはありますか」と、現場の声を聴いて頂いた。私自身としては、開設者の“認可”ではなく、“認定”というところで、今後どうなるのか不安な点がある。「市場流通ビジョンを考える会※」でいくつか要望書を提出したいと考えている。

 また、先週は農林水産省検査官の、予告のない訪問があった。財務検査だけでなく、全体の仕事のやり方まで含め、「まずは大田花きから」と検査が行われている。新卸売市場法案が7月に国会を通過したとしても、東京都は新条例を作る。従って、実際の施行は来年となるだろう。その間、どうすれば良いのか、検査官へ意見具申していきたい。

 JA常陸大宮地区枝物部会の研修会、及び総会が、21日(土)に開催された。この会は、地域が協力して、耕作放棄地に花桃を中心とした枝物を育て、地域を活性化させてきた。第二の人生に農業をやろうとする人もいる。近年、若い人たちも入り、いよいよ売上げも一億円を目指すところまできた。この枝物を、花き市場がお金に換える役割を担っている。消費の現場でも、枝物はますます人気となっている。

 先週末、(公社)日本家庭園芸普及協会主催の「2018日本フラワー&ガーデンショウ」がパシフィコ横浜で開催された。本年も力が入っており、アジサイがテーマだ。また、横浜市は街を綺麗にしているのが分かる。来場されている方の年齢層も幅広く、切花やガーデニングそのものの需要は今後も期待できる。

 虎ノ門ヒルズ森タワーで先週末行われた「OUR PARKS TORANOMON FLOWER MART 」では、花屋さんやドライフラワーのお店等が、開放的な2Fアトリウムの小道の両脇に並び、展示・販売されていた。枝物や草花が売れ筋で、高そうな立派なものは敢えて品揃えをしていない。まさにシャンペトル、里庭風な感じだ。売る方は、現在の花き業界でトップクラスのデザイナーや、ガーデナーのセンスを持った方が多かったので、感度の高いお客さんは満足しただろう。虎ノ門界隈は、マッカーサー通りを中心に再開発が進んでおり、ナチュラルテイストの空間が増えている。

 そういえば、この近辺のホテルの50階以上のパーティー会場で使用されている花も、大きく立派なものよりも、草花を使って欲しいという要望が大きいそうだ。宴会場担当のフローリスト・リベルテさんは、センスと人手が多く必要となっている。アッパークラスの人達は本当に、文化と自然を取り込む。この二つにお金を出すのだ。

 大田花きは、カレンダーを二種類作成しているが、そのうちの一つはデザイナーの市村美佳子さんの担当だ。市村さんは某一流百貨店に乞われてショップを出す等、時代の先端をいくデザイナーだ。シャープというよりも、植物や物に対する愛情と、その場を清々しくする「透明」の演出に秀でた方だ、その方が、「磯村さん。やっぱり、器です。器があった方が楽に花をいけられる。あるいは、花の良さを引き出す方法を器が教えてくれます」と仰っている。

 市村さんは、25日(水)まで、南青山で、花瓶と花を販売するイベント店を出店している。花瓶を選ぶために店に入ると花が置いてあり、自分が好きな花を挿してみて、自分の美意識に合うか確認できる。花瓶と花のセットで、花瓶の良さを知ってもらい、買って貰おうとする企画だ。そういえば、森タワーの花フェアでも、リベルテさんが「花瓶がよく売れた」と仰っていた。市村さんは、日本とヨーロッパの古いものから新しいものまで、3万円以上もするので、普通からしたら高く感じるかもしれないが、それを感じさせない位、価値の高い花瓶を展示販売していた。ここでもナチュラルなものばかりで、私は花市場だから花だけを売ろうとするが、そうではなく、もっと自然や枝物、葉物、そして、野の草の感じが必要のように思う。

 最後に、結婚式と葬式需要についてお話ししたい。※資料
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 これらは法則に則って高値と安値が繰り返される。結婚式は、一番多いのが11月、次いで、10月、5月、3月、9月、4月の順だ。これが一年を均してみた場合、平均よりも多い月だ。最も少ないのは8月、次いで、1月、そして、7月、2月、12月の順だ。これは昨年の挙式件数の実績である。今、結婚式はシャンペトル風の需要が多いから、シャンペトル風の素材は、これらの需要に合わせた供給が必要である。同様に、葬式では、件数が増えるのは11月から3月までの5ヶ月間だ。その中で最も多いのは1月、12月、3月の順だ。4月から10月までの7ヶ月は、月の平均よりも少ない。従って、葬儀専門に使用される白菊はこの需要期に合わせて供給していく必要がある。葬儀が特に少ない6月、7月、9月の三ヶ月は、白菊のニーズが本当に少ないのだ。需要の少ない時期に出荷のピークをもってこようものなら、目も当てられないほどの安値になってしまう。ターゲットを明確にするのは当たり前のことだ。

※市場流通ビジョンを考える会:東京聖栄大学 藤島客員教授を中心とし、市場流通の今後を検討していく会
※資料:経済産業省の特定サービス産業動態統計調査より
件数はあくまでも経産省特定サービス動態調査によるものです。

投稿者 磯村信夫 17:56