社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年04月13日

不安を力に変えてきた日本人


 先週の4月8日(水)、お釈迦様の誕生日に切花の単価がまた一段ガクッと下がった。更に、10日(金)にもガクッと下がった。鉢物では、胡蝶蘭の鉢がこれと同じ下がり方をしている。しかし、幸せなことに、ホームセンター等に苗物を買いに行って、家でガーデニングが出来る状況なので、苗物が安いなりに、イギリスと違い、お天気と政府の対策のおかげで荷が動いている。今度の新型コロナウイルス対策では、日本は強制ではなく勧告レベルでとどまっているので、散歩にも行けるし、家庭で過ごす最低限のお買い物は出来て、本当に私は有難いと思っている。しかし、これでは手ぬるいと思っている人もいる。

 よく言われるように、日本人は日頃の生活で「幸せだ」と思っている人が少ない。幸せを「Be Happy」と取るのか、「Well Being」と取るのかによっても違うとは思うが、日本はともかく、幸せだと思っていない人が多い国民なのだ。それにもかかわらず、世界で1、2位を争う長寿国家だ。
 
 「幸せ」は、次の四つの要素からなると言われている。一つ目が自己実現や、自分が成長出来たという感覚。二つ目が人との繋がりと感謝。三つ目が前向きに捉えること、楽観的な見方。四つ目が主体性、独立。自分のペースであること。これが世の中でいわれている「Well Being」での“幸せ感”だ。そして、日本はこの中でも、二つ目の“繋がりと感謝の気持ち”が本当に強いと思うが、「幸せ」と感じていない人が多い。何故なのだろうか。長い間疑問に思っていたが、昨日読んだ本にそのヒントが隠されていた。
 
 その本は、今ベストセラーになっている脳科学者・中野信子さんの『空気を読む脳(講談社・2020/2/19)』だ。中野信子さんによれば、安心感や幸福感の素になるホルモンである「セロトニン」の量が、日本人は世界の中でも少ない部類に入る民族なのだそうだ。具体的に言えば、セロトニントランスポーター遺伝子の中でも、セロトニンの働きが弱いSS型遺伝子を、日本人は多く持つのだという。要するに心配性だったり、不安に駆られる人が大変多い国なのだ。よく男女の性格の違いが話題になるが、セロトニンも大きく影響している。一般的に女性は男性の二分の一しかセロトニンを作らない。従って、女性には男性よりも不安に駆られ、心配性の人が多い。心配だから、まずは現実的な、手前のことについてテキパキと処理出来る。そして心配性な分、協調性が高まる。
 
 本書には、心理学者のゴールドバーグが提唱している「ビックファイブ」の記載もある。いわく、人の性格には5つの因子がある。1つは「神経症」の傾向、2つ目は「外向性」。3つ目「経験への開放性」で、経験することで想像力や新たな冒険を求める性格。4つ目が「協調性」で、利他性や実直さ等がこれに当たる。そして5つ目が「誠実性」だ。意思をもって何かをすることと、責任感等。この5つの要素に分かれているとされる。そして日本人は、その中でも「協調性」が大変高いと言われている一方で、「協調性」が高いということは、少しでもルールや「協調性」から逸脱した人をバッシングしやすい傾向であるとも言える。不正には一致団結して制裁する等、一線を越えたところでは逆襲しようとする力が働き、赤穂浪士の忠臣蔵だとか村八分のような現象もこれで説明がつく。不安にかられるが「みんなで渡れば怖くない」精神と利他性で、ルールや皆(社会)から外れた人間に逆襲しようとする。
 
 こう考えると、不安を感じて一致団結してそれを乗り切ろうとする日本人は、「不安を力にして身の安全を図ろうとすることが出来る民族」ということだろうか。花き業界では、3月から沸き上がった「家花見」の気運、イベント中止等で需要が減少した花を家庭に届けよう、家庭で飾ろうという、日本全国の動きが、「協調性」「利他性」の中で展開されている。さらに、大きくこの運動を盛り上げたい。私たちは安全に生きるために、セロトニンの少ない民族として生まれてきている。この気運をもとに、あらゆる人たちと協調しあって、精神の健康をも図りながら、まずは、今政府が提唱している「人との接触をマイナス80%」に目指すこと。そして、現在の会社の赤字を、今後、5年くらいかけてでも必ず取り戻すこと。その意志や、あるいは計画を作っておくことが必要だ。
 
 日本人は本当に幸せに感じない人たちなのであろうか。不安で心が覆いつくされてそのままなのだろうか。国連の関連団体が発表している「世界幸福度ランキング」でも低い結果だが、このアンケートの取り方はおかしいのではないか。日本人が幸せを感じるのは、「諸行無常」、不安や苦しみや幸せ一辺倒ではないような、諸々のことだ。その中にこそ真実を見出して、それを味わいながら生死していくことだ。幸せというよりも「真善美」、ここに立脚している。これは、幸せよりももう少し深いところにあるので、アンケートの取り方が、ちょっと日本人にそぐわないのではないか。こう私は考えている。不安を力に変えてきた日本人が、今の苦境を乗り越えられないはずがない。精神主義ではないが、まずは精神で乗り越えてゆくことを、皆さんと共有したい。
 

投稿者 磯村信夫 16:13