社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2016年12月19日

OTA花ステーション完成


 大田花きの100%子会社・㈱大田ウィングスによって、場内西側にOTA花ステーションが建設され、12月15日(木)に竣工式が執り行われた。これで、大田花きのスロープ棟を除いた荷扱い面積が40%広がる。また、自動搬送機が本棟の物流棟に直結しており、定温管理付きの搬入・搬出場所として、また、小分け作業場所として利用出来る。

 花保ちに対する要望が、消費者や小売店から多くある。現状は、月曜日の出荷物の中に木曜の午後や金曜日に切花されたものが入っている産地もある。花保ちは「温度×時間」で表されるので、国内産地の皆様は、荷がまとまり次第、大田花きへ出来るだけ早くご出荷頂きたい。月曜日の輸入花と国内産地からの出荷物を比べてみた時に、アジアからの輸入品であれば、国内産地と同じ切花日の花も輸入品にあり、これでは、消費地に近い国内産地の優位性は乏しい。

 世界の花き業界は、この手不足の中で何をどのようにしていけば、それぞれ文化背景が違う国の生活者に、納得価格で花を買ってもらえるだろうか。インダストリー4.0・第四次産業革命による、人工知能の利用やセンサーを使ったIOT化をするにしても、クラウドコンピューティングでBIGデータを解析するにしても、バイテクやナノテクを使った様々な分野の成果物にしても、これらを利用してどのように生産性を上げていくか、ここに向けた投資をしなければならない。

 咲く時に最もエネルギーを消耗することから、咲いたものを出荷し家庭で後処理をして飾って貰った方が、花保ちが良いということが分かっている。従って、国内産地は、輸送効率は悪いが、咲かせて出荷することによって差別化を図っていた。しかし、輸入品もリパックし、湿式で送られてくる。切花後何日経っているかは分からないが、見た目は水が上がって元気そうに見えるものも多い。湿式輸送の花は、輸入品もみずみずしい、国内産地もみずみずしい。これでは、その花の寿命が分からない。そう言えば、仲卸も前日仕入れた花も湿式にするから、鮮度の感度に、その花の寿命そのものに、ずいぶんとルーズに花き切花業界はなっているのではないか。

 これを、大田花きとしては、もう一度きちんとわかるようにしたい。その為に、一度水が下がったら殆ど上がりにくいというものを除いて、基本的には乾式で流通させる。理由は、花屋さんの殆どの人は、市場で買った後、段ボール箱やバケツから花を抜いて、ライトバンに積んで帰るからだ。だとすると、温度管理を徹底してその後流通させることが、花の品質も、コスト面でも大切だ。横箱なら、現在起きている自動化やロボット化等の、いくつもの生産性を上げる手立てを講じることが出来る。今後とも、物流を担う人手は足りなくなっていく。生産地から、卸・仲卸、場合によっては花屋さんまで含め、今後とも人手不足は続くだろう。花き産業としては、むしろこの人手不足の方が深刻で、出来るだけ手がかからない、しかも花保ちが良い荷姿が必要だ。そして、消費地に近い日本で作っているということは、それなりの切り前と荷姿を取るべきなのだ。これが、大田花きがOTA花ステーションで実現したいことである。

 どんなに切花好きでも、家庭需要は一週間に一回である。鉢物は一ヶ月に一回、一ヶ月4週だとすると、週0.25回だ。それに比べて青果の場合、一日3回食事をするので週21回、しかも家族の数分だけ必要になる。一週間の需要量は二人世帯が平均値であったとしても42回だ。青果と切花、鉢物のビジネスチャンスの頻度を比較すると、42対1対0.25となる。売るに天候、作るに天候、しかも、日常のビジネスチャンスは野菜と比べて少ない。そう計算すると、大手小売店や販売力のある量販店が花を扱うとしても、店舗ごとの仕分け作業等を、どこかコスト削減になる場所でやらないと、小売店の負担はあまりに多すぎる。そこで大田花きでは、新しく出来たOTA花ステーションや、花き施設整備㈲が管理する大田市場花き部の北側を使用して、卸売市場の業務が終わったら、店舗ごとの仕分けやピッキング作業を代行したいと思っている。これは、コンビニ業界を見てもわかる。一店舗にあれだけの品揃えが出来るのも、専門商社をかませることで一括納品し、店舗ごとの検品レスまで含めた物流をしているからだ。ここまでを大田花きが行い、仲卸や頑張る専門店が、自前でやるよりもコストを削減していきたい。小売店は5店舗程であれば、自社内で、あるいは、ちょっとした工夫でそういった作業が出来るだろう。しかし、それ以上となると、きちんとしたデポ機能が必要になる。それを大田花きは代行したいと思う。青果の場合、仲卸がその機能を持っているところが多いが、花きの場合、あまりに多くの品種があり、趣向性が存在する。定型化しているのは、仏花や葬祭場の花位のものだろうか。しかし、葬祭場も、この頃はファッショナブルな花を使用する。だからプロが代行する必要があると考えている。

 まず、産地の皆様方へお願いするのは、荷がまとまったら早く消費地に送り届けて欲しいということだ。大田花きは鮮度の良い状態で販売するので、産地のビジネスチャンスは必ず広がる。また、小売店の皆様は、鮮度の良い品をいつでも手に入るので、こちらもビジネスチャンスは広がるだろう。このように大田花きは花ステーションを活用し、花き業界に役立って行きたいと考える次第である。


投稿者 磯村信夫 : 16:12