社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

[]

2016年12月26日

12月の物日で顕在化したこと


 26日(月)、またもや成田空港の物流が混乱している。羽田空港は花の単価の割に運賃が高いこともあり、国内航空便は極端に増えることなく、26日の今日も常識的な混乱レベルで到着したが、成田空港は酷い。魚と花、一部、今まで高かった野菜や果物が海外から入荷し、その混乱は目を覆うばかりだ。物流業者は「待ち」の商売で、20世紀の延長のロジスティックをやってしまったのだろう。

 2016年の12月は、明らかに今後の相場展開を示唆する傾向が表れていた。クリスマスはホームパーティーが基本になり、プチ贅沢の範囲内で、赤いバラも赤いガーベラもそれなりに売れたが、リーマンショックから回復した2010年頃のような高値は出なかった。時代は変わったのだ。第四次産業革命の最中、富める者とそうでない者の購買意欲は甚だしく異なり、世間でも団塊世代が年金族になって、元気な団塊ジュニアや若い人たちは、デパートを割高と考えあまり使わない為、デパートは売れ行き不振だ。一方で、駅ビルや値段がお手頃の専門店等はそれなりに健闘している。花きについてもこの傾向がはっきり表れており、クリスマス、年末年始の需要期といえども、量は売れるが、卸売価格は普段と変わらなかった。量販店やその他色々な所で花を売っていて、質が良くても割高なものに消費者は手を出さない時代になってきたことがはっきりした。

 2016年第3四半期(10月~12月)の需要期は、9月10月の長雨が影響し不作となった為、かなりの産地が作型を変えて年末に荷を集中させた。その結果、荷が出てきたので小売業者は需要期でも時代に合せて通常の価格で売ろうとする。従って、相場が10月~12月上旬の高値基調の価格より下がった。白菜と違って、四つにカットして売ることは出来ない。花は一本で売らなければならないから、どうしても普段の相場にしようという力が動く。季節の花や量的に出回りの少ない花が時価となる。これらの花は、需給バランスが小売価格にも反映されるのだ。一方、大品目については、価格は一定の範囲内で、今後ともその価格はボックス圏内で納まることになる。

 もう一つの傾向は、お正月用の花としてディスバッドマムが堅調であったことが挙げられる。40歳代の人達が作った価値観だ。社会の色々な価値を決めているのは、この世代の、子どもの時からゲーム機で遊んできた40代から、携帯電話で何でも済ませてしまう30代の若い人たちまで、40歳以下の人達に移っていることを示している。既存の花き業界は「文化」を意識し過ぎて、いつの間にか仏様の花のように、ワンパターンな過去の決まりに則ったものを、「高い、安い」と一喜一憂し、それ一辺倒で来ている。ここでもう一度、花き業界の仕事で、時代遅れのモノやコトを認識し、普通の時代にフィットしたものに早く変えていく必要がある。


投稿者 磯村信夫 : 14:37