社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2016年12月12日

経済が進化し、どこの国の園芸業界も人手不足


 世界の人口は増えているのに、日本も含め、園芸農業界は人手不足である。国によって理由は様々だろうが、今迄と同じ人件費では人が集まらなかったり、不法移民の取り締りで人手不足になった所もある。また、都市部に人が流出し、人手不足の所も多い。同じ園芸の中でも、花き産業は高い技術を要する品目が多く、安定した雇用がそのファームの競争力となる。安定した雇用となると、可能なら周年、花を作り続けた方が良いに決まっている。同じことを繰り返していれば必ず熟達し、品質を見る目も養える。そのようにして、地球上の花き産地は限定されてきた。

 現在の主な花き産地は、赤道に近い高冷地であり、日射量、温度も一定水準の幅で、水もあり土壌も悪くない所だ。また、労働の供給が可能で、飛行場や港から遠くない所、更に、定温管理する為の電気が通っている所である。これらの条件を満たしているのが、ケニアやルワンダ、エチオピア、エクアドル、コロンビア、インドのバンガロール近辺、そして、マレーシアのキャメロンハイランド、ベトナムのダラット、中国の海南島、先進国としては、技能と社会インフラが整っている日本や台湾、オランダ等である。また、品目は偏るが、南アフリカ、オーストラリアも挙げられよう。これらの産地は我々花き業界の宝で、更に発展し、生産量を増やしてもらいたい訳だが、人手不足なのである。

 世界の花き業界は、この手不足の中で何をどのようにしていけば、それぞれ文化背景が違う国の生活者に、納得価格で花を買ってもらえるだろうか。インダストリー4.0・第四次産業革命による、人工知能の利用やセンサーを使ったIOT化をするにしても、クラウドコンピューティングでBIGデータを解析するにしても、バイテクやナノテクを使った様々な分野の成果物にしても、これらを利用してどのように生産性を上げていくか、ここに向けた投資をしなければならない。

 大田花きでは、在宅ゼリや画像ゼリ、大規模な鮮度保持物流施設の建設、自動物流機器や半自動台車の使用等を行っている。花き業界は、一つ一つを見れば確かに合理化の手前まで来ている。生産から小売りまでのサプライチェーン全体が、それぞれ同じ方向を向いて、情報を共有しながら各業者が合理化を図る。そうすれば、生産性は今より上がるかもしれない。しかし、アメリカのサンフランシスコやシアトルを見ると、自動運転まで含め、インダストリー4.0に踏み込んだ投資をした企業の労働者の生産性、その商品の生産性はどうかというと、今の所現状より際立った変化はみられないという報告がある。未だその段階なのだ。我々花き業界もそうなので、最初から世界標準で足並みを揃えて業界全体が行うのは無理だという場合、問題意識を持っている企業が実験してみて、まず成果を出して見せる。それを公表し業界全体に訴える。こういうことが必要ではないかと思う。

 生産性を上げる為に、花き業界でも様々な業務の効率化が考えられる。例えば、昨日、一昨日と、北海道の千歳空港は雪で大混乱していた。これだけ寒くなると、水を付けて輸送するタイプは凍ってしまい大変だ。仲卸さんでも、水の入っている輸送容器から水を出したりするだけで大変な作業だろう。そんな時に、乾式輸送にして、スミザーズオアシスジャパン(株)から発売されている、素早く効果的に水揚げが出来る水揚げ剤や、更に、海外で先行して発売されていた切戻し不要の水揚げ剤等の商品を使用することで、トータルの業務が省力出来るのではないだろうか。また、乾式箱に関しても、(一社)日本花き卸売市場協会では、効率的に輸送出来るよう、トラックの内寸を考慮し、1100㎜×360㎜×260㎜、1100㎜×360㎜×130㎜、1100㎜×360㎜×173㎜の横箱の規格を、パレットであれば1100㎜×1100㎜のサイズを提案している。これを是非使って欲しい。さらに、業界全体で統一したコードを使用することも検討している。そうすれば、情報の扱いも省力化出来る。それだけでなく、これは情報開示されればの話だが、生産者は自分の作った花ががいくらで売られて、どのような消費者が買ったかどうかを知ることが出来る。

 このように、種苗から小売りまでの花き業界は省力化を行い、インダストリー4.0で改善しながら、生産性を上げる必要がある。まだ具体的にどうしていけばいいのか分からないので、バラバラな改善が行われている。これを繋いでいかなければならない。日本だけでなく、世界のどの産地も手不足なのである。これを前提に合理化を図ろうではないか。


投稿者 磯村信夫 : 18:36