社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2016年11月14日

現場改革の一つ


 私にはいつも、「プレートテクトニクス」の意識がある。地球は昔、南極近くの超大陸パンゲアに固まっていたが、「プレートテクトニクス」により、それぞれ移動してきて現在に至る。実生活においてもその“プレート”は絶えず動き、携帯端末の進化や「インダストリー4.0」と言われる進歩、AI技術等、そのプレートの上で、それに合わせた生活をしていくことが良く生きることに繋がる。足元が絶えず動いているから、プレッシャーは毎日感じる。自分の心身ですら、歳をとってきて今迄出来ていたことが出来なくなってきたり偏屈だったりしている。しかし、一方で、確実に見えることも増えてきている。

 そう感じている私が花き業界を見ると、種苗から生産、ミドルマンとしての卸売、そして、小売りまで含め、もっとしっかりしなくてはと思う。花き業界の主役は生産者だ。国内、海外の生産者まで含め、もっと今の時代に必要とされる花や緑を生産し、地域の生活者に喜んでもらうことで儲けられるようにすべきだ。また、自助努力だけではなく、ミドルマンが生産者にもっとお金が入るよう助力すべきである。

 花き業界のもう一方の主役は、何といってもお金を出してくれる生活者だ。供給サイドは「あなたの欲しいものはこれでしょう?」と、必要とされているモノや、「そうそう、これが欲しかったの」と、潜在的な需要を満たすモノを供給し、生活者をよりハッピーにすることが重要だ。紅葉狩りや河津桜等、花を観に行く旅行は人気だが、オフィスや家庭で花や緑を飾ってもらうことも、心豊かに生活する為には必要なのだ。そういうエビデンスが医学的にも多数出てきており、花や緑を買ってもらうモチベーションに繋がっている。


 では、今の花き業界の問題点は何かといえば、人をハッピーにする大元の、花や緑を作る仕事をやりたいという人がそんなに多くないことだ。団塊世代が75歳になる「2025年問題」に向けて、確実に生産者数が減っている。これは困った問題だ。花き業界全体、そして、国の問題として、一番に心血を注がなければならない。もちろん、卸売市場もミドルマンとして、消費拡大運動に加え、生産地に足繁く通い、安定収入につながる生産拡大のお願いや、商材の提案等お手伝いを行っている。有力小売店も産地に訪問し、「もっと作ってください」とお願いするようになってきた。

 どうすれば消費がもっと拡大し、生産が増えるか。飾るTPOに合わせ、用途ごとに種苗から生産、ミドルマン、小売、ここまでのサプライチェーンを明確に組み、プレイヤー同士が「○○を作ってください」、「こういう風に売ります」等といった契約取引を、その品目の全体量の3割位までを行うことだ。赤道直下の高冷地で、一年中あまり気象条件が変わらない所は、5、6割も契約栽培、契約販売が出来るだろう。しかし、日本列島は縦長で、出荷時期と言うものがあり天候の影響を受ける。よって、3割を確実なものにする他は、売るに天候、作るに天候で、その時その時の流れに任せておけば良い。残りの7割もプロの業者が扱うので、終わってみれば例年並となる筈だ。この3割打者が大切なのだ。これは輸入品を取り扱う商社にも言える。輸出入はリスクがあり、本当に大変だ。従って、国内の産地と同じように3割とみておくのが安全だ。市場の取引では、前日・前々日の相対で取引すれば良い。まず、既存の流通ではこのようにすべきなのである。

 農業を魅力ある産業にするために、「もう最後だが、今ならまだ間に合う」と、あらゆる段階で、あらゆるプレイヤー、すなわち、国や産業界、現場の業界人の手によって改革案が練られている最中だ。政府の規制改革委員会や自民党の農業骨太PTの改革方針がはっきりするのは、今月中と言われている。そして、国会の手続きを終え、変革に向けた取組みが本格化する前の段階では、先述した取組みが農業者と生活者、小売店にやりがいと利益をもたらす公式であろう。さっそく始めていきたい。


投稿者 磯村信夫 : 16:45