社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

[]

2017年07月24日

多様な菊の役どころを消費者に伝えよう


 昨日、浅草ビューホテルで開催された「平成29年度華道大学講座」において、塚越応鐘氏の花生けライブがあった。カエデとドーダン、アジサイとヒマワリを使い、留めを使わずして、大きめのガラス花瓶に大作を生けられていた。生ける時の所作、そして、混みすぎる枝にハサミを入れて切り取る所作には、迷い等は一切感じられない。まさに、真剣勝負の試合を見るかのようであった。思わず背筋が伸びて、ひんやりした、透き通った空気を感じた。緊張感のある、しかし、自然を感じさせる花のパフォーマンスであった。

 帰りに浅草の六区から浅草寺の方へ歩いて行ったが、浴衣姿のお嬢さんが多いことに「今」を感じた。伊勢丹本店でも、1階で浴衣の特設コーナーが設けられていたり、ユニクロでも取扱いがある。先日、仕事の関係で裏原宿へ向かった際も、また、ちょっと渋谷へ行ってみても、花火大会がある訳でもないのに、浴衣を着ている女の子がいた。さらに、浅草等ではカップルの男の子も上手に浴衣を着ていた。着付けをしてもらったのだろうか、これだけ浴衣を着こなしている女性を沢山見られるということは、時代が変わったことを意味している。昔ながらの「和」を感じられるものが、リバイバルで人気となっているのではないだろうか。

 暑いからそうめんや冷麦を食べる。かき氷を食べたくなる。これが日本人の「和」だ。ここに、幅の広いラインナップを揃えたトルコキキョウが人気になっている訳がある。トルコキキョウは、バラのようなフリンジタイプのものから、白に青のラインが入った一重の涼しげな「和」を感じられるものまで、様々な種類がある。「涼」を求める時には、「和」を感じられるトルコキキョウが人気だ。このように、需要に応じた品種を提供出来るトルコキキョウが、年間を通じて人気なのである。そうなのだ、日本の夏はトロピカル以外にも「涼」≒「和」の草花や、シノブ等のシダ類が人気だ。菊でも、葉のしまった長野県の高冷地の菊が人気である。

 4月から続いた白菊の安値は、葬儀の祭壇でラインを出す為に最適な、止葉を少し大きめに作り上げた、白の大輪で、冠婚葬祭の規模が小さくなり、遠目から祭壇を見るのではなく、故人を囲むような、間近で花を見る小さなサイズの葬儀が多くなると、遺族が美しいと思っている花や、故人が好きだった花が祭壇に使われることが多くなる。家庭に飾られる花と同じように、近くで見て「面白い」、「キレイだ」という花だ。白菊が安かったのは、実際は儀式でラインを出す為の白菊の供給が多すぎた為だ。菊の役どころは、消費段階では様々にある。しかし、ハロー効果で「菊類が安い」、「仏花が安い」となってしまった。葉をしめて、しかも葉の刻みも多く、花首もすっきりしている高冷地の菊は、「涼」≒「和」で浴衣人気の様な、リバイバルの需要がこようとしているのだ。菊もトルコキキョウ同様、需要に応じた品種を提供できるよう幅を持たせ、特に夏の時期は「和」の花として売り出して欲しい。スーパーでも、仏花として花束を売り出している所が多いが、そうではない、一輪菊入りの「和」の花束を売り出して欲しいのである。

 菊やリンドウ、キキョウ等の「和」の花が、日本の夏を代表する浴衣や花火のように、もう一度人気になってくる予感が、若い人を見ているとするのである。

   

投稿者 磯村信夫 : 16:50