社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年09月18日

品揃え機能こそ最も大切


 『花研手帳』を見ると、9月17日は「台風の特異日」と書いてある。今年も悲しいことに“当たり”で、都合6年間、日曜・祝日に台風が来ており、花き業界の生産・消費に大きな影響を与えている。ちょっと宣伝すると、(株)大田花き花の生活研究所がプロデュースしている『花研手帳』は本当に良く出来ている。花き業界人には仕事上欠かせないアイテムだと思う。

 今朝、現場を回っていると、今年はテッポウユリの主産地・秋田が天候災害の為、荷が少ないようだった。それを、兵庫や長野等の新テッポウユリの産地にお願いするのか、出荷が始まったばかりの球根テッポウの産地である千葉や岐阜、四国や九州にお願いするのか、品目担当は悩んでいただろうが、今日は日本よりも先に涼しくなって茎がしっかりする韓国産の物が多かった。

 韓国の花き業界は、経済不況と言ってよい状況下にある。THAADミサイルの設置により、韓国の輸出先として最も重要な中国での不買運動、現地に出店している会社への不当な取扱いが行われたり、輸出そのものが出来なくなったり、さらに、韓国における中国観光客が極端に減ったりしている為だ。中国人が好きな大輪のシンビジュウム等も、韓国の生産者は「今年はアメリカに輸出する」と言う。そんな背景から、韓国は出荷先として日本へ方向を向け、さっそく不足分の手当が出来たことのようだ。花き業界まで政治問題が絡んだ、今日のテッポウユリの入荷である。

 さて、現在、卸売市場法改正の中で「卸売市場の機能として何が大切か」という点に絞り、本日はその中の重要なポイント一点をお伝えしたい。それは卸売市場の「品揃え機能」である。何故、卸売市場ではこれだけ多くの品揃えが出来ているかというと、事前に契約しなくても出荷することが出来、また、事前に契約をしていなくても買うことが出来るからだ。例えば、大田花きの今日のセリ数は1万4千ケースであった。「日本の花き相場を出す」卸売市場として、大田花きでセリは欠かせないものだ。セリ前取引で荷が足りない品物について、特定買参人が「もっと欲しい」と言っても、契約取引を除いた入荷数の、少なくとも20%はセリ分として確保する。たまに、手違い等で契約取引が未納だった場合などは、本来セリ分であったものをセリ前取引で渡すこともあるが、これは例外中の例外だ。

 では、殆ど全ての荷を契約取引にしているコロンビアやエクアドル国等の、日本やオランダ型の卸売市場が無い南米の産地を見てみよう。買い手市場の近年、予約相対で取引されている商品は、多くともその農場の50%未満だ。この頃は天候不順が続いているので、30%なら約束を違えず出荷できると言うところもある。それ以外の品物も、主にマイアミにある販売子会社かホールセラーへ、基本的には一週間前まで、天候や輸送トラブルがあった場合でも三日前には契約を行わなければならない。収穫当日まで取引が成立しない場合は、カーネーションやバラを捨てることになってしまう。もちろん無駄にしたくないので、販売の見通しが立つ場合は、2℃に保冷し保管したりする。このように柔軟な対応をとっても、作付けしたが出荷出来なかったロス商品は、嘗ては約20%近くあった。それでも採算に合っていたのは、コロンビアやエクアドルがそれだけカーネーションやバラを生産するのに適した地であること、人件費が安かったからだと言えるだろう。しかし、経済発展がめざましくなってあらゆるコストが上がり、ロスを全体の1割以下に抑えなければならなくなってきた。そうすると、産地の希望としては1年契約が多くなるが、益々天候不順による契約不履行も多くなる。作付けた物のロスを1割に抑え、採算に合うような経営を模索しているのが現在の状況だ。

 日本には消費地に卸売市場があり、また、地元には直売所もある。近年、業務用業者や加工業者、小売大手が、特定階級や品質、産地を限定して契約したがるが、残りはどうするのだろうか。だったら全て卸売市場で商流した方が良い。品揃えが豊富なので、多岐に渡る業者が居て、卸・仲卸は販売をしている。そして、卸売市場には差別的取り扱いの禁止、受託拒否の禁止があるから、生産者は何でも出荷することが出来る。今後とも、契約値決め取引だけでなく、産地は自由に市場に出荷出来る制度にしなければならない。卸売市場(卸・仲卸)は、多岐にわたる品揃えで多岐にわたる需要を満たし、生産者と消費者、業者の役に立っていきたい。繰り返すが、品揃え機能が進化出来る市場法にしていかなければならないと考えている。


投稿者 磯村信夫 : 16:35