社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2016年11月21日

出来ると思わなければ出来ない


 週末、東京都千代田区・日比谷公園で『全国魚市場&魚河まつり』が行われた。家庭で魚を調理することが少なくなり、日本文化の象徴でもある魚料理を好むのは、年配者に偏ってきた。それではいけないと、お魚の美味しい食べ方やマグロの解体ショーだけでなく、「このお魚はこんな風に食べると美味しい」と地域独特の文化の魚料理を体験してもらい、若いお母さんたちにも食育していこうというイベントだ。日本文化の伝承事業である。

 大田市場の水産物部でも、築地の補完市場として、大きな水槽を用意し、食べる時により美味しくなるよう計算して活け締めし、仲卸が届けるサービスや、小田原の魚市場他と提携して、未明に獲れた魚を早朝、卸・仲卸を通じて近隣の小売店や料理店に提供したりといった努力をしている。魚の消費が減らないよう、魚料理を楽しんでもらうようにしている。

 確かに、年配者もお肉を食べるようになってきたし、包丁すら無い家庭もある等、消費減の理由は沢山あるが、それらを並べ立てていても仕方がない。「必ずやる。出来る。」とマインドセットし、出来る為には何をやるかを考え実行することだ。自ら子会社を作り、定番になっている魚の切り身だけでなく、季節の美味しい魚を納品したり、レシピを添えてみたり、リテールサポートしたりする。また、日本酒ブームだから、そこへ向けて「ツマミ」の勉強会を開催したりする。実際に、時間差でプロの時間と一般消費者も入場出来る時間を設ける等、公設市場でもひらかれた卸売市場にしている。そのような形で、魚食文化の向上と消費減にストップをかけ、健康のために拡大させる運動をしていく必要がある。


 魚の場合には、漁場の産地市場と消費地市場の二つがある。産地市場の仲買人が出荷者になるので、漁師の小売価格に対する取り分は30%を少し割るという。しかし、特に傷みやすい鮮魚は、このシステムでやらない限り、消費地の小売店までスピーディーに届けることが出来ない。業界は各自が夜通し作業しているので、消費者が種類豊富で新鮮な魚を、適切な値段で買うことが出来るのだ。花や野菜は生産地の農協部会等が出荷者になるから、魚より生産者の小売価格に対する取り分は増えるが、忙しさは同じようだ。とにかく早く、鮮度の良いモノがいち早く運ばれてくる。

 魚の業界を見ていると、消費の減少は仕方ないと思っている業者が多いのに気付かされる。それを見ていると、こちらもやるせない気持ちになって、「仕方ないと思っているのならば、赤字になる前に辞めてはどうか」と言いたくなってしまう。確かに、経済面でも、地元の信用金庫は今の時代、数の調整局面になっているから、市場の業者を含めて、生鮮食料品花きを取り扱う業者の中には、暮れの繋ぎの資金を借りることが出来ない人たちが出てきている現状がある。しかし、そんな中でも、「出来る」と思ってやっている業者が、小売りや仲卸、卸売市場の中に少なからずいる。もう一度、生鮮食料品花き業界の皆様方に申し上げたいことは、「出来る」、「やらなければ」とマインドセットし、出来る為にやるべきことをやる。イノベーションとは、勝つということは、そういうことだ。こういう仲間が増えてくれば、社会のムーブメントになる。少なければ、特定の会社を除き社会に押し流される。是非とも、出来ると思って実行する仲間を増やしていこうではないか。

 PS:別件だが、政府の規制改革推進会議の中で卸売市場が取り上げられている。今、ニュースに取り上げられている豊洲市場の件が「卸売市場不要論」に対し「待った」をかけ、卸売市場の存在を認めた形となった。関係するメンバーや自民党農林部の方々の中でも、「市場は必要だが、どのような改革をするか」で改革の方向性は定まってきている。方向性が発表されてきた段階でご連絡したい。


投稿者 磯村信夫 : 16:31