社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年01月09日

もう一度「温度×時間≒シェルライフ」を考える


 初市からバラ・カーネーションの相場が堅調なのは、ここ20年来初めてのことである。また、お天気が良かったので、スイートピーが潤沢だったことは、お花屋さんの店頭から「これから寒さ本番ですが、もう花屋さんは春です」と、消費者にメッセージを伝えることが出来た。鉢物のプリムラ類と同様、切花はスイートピーで「春よ来い。早く来い」と意識出来て、花き業界の面目は保たれた。しかし、他の花々は少ない。昨年の9月・10月の長雨、日照不足では、生産力が衰えてしまったのだろうか、そのダメージは2月まで続く。

 政府は農業改革を、本腰を入れて取り組もうとしているが、これは日本の課題として、私のような業界人でなくても、国を想う人誰もが注目していることだろう。その方向性や手法には議論があるだろうが、熱意は伝わってくる。後は実践者の我々の熱意だ。中間流通業者の卸売市場人として、もっと踏み込み、もっと生産者と消費者、また、消費者の代弁者である小売業者のことを想い仕事をする。これが必要だと感じるが、具体的に何をすべきかとなると、なかなか難しい。

 その具体例の一つとして、弊社大田花きは、切花の場合、そのシェルライフを全うする鮮度保持物流を敷きたいと考えた。シェルライフは生産者が切花するステージ、その植物体の水分保有量等、いくつかの条件が挙げられるが、シンプルにいうと「植物体の温度×時間」で表すことが出来る。それゆえ、定温流通に相応しい設備を卸売市場として備えた訳だが、さらにこれをトラック業界全体にも広めていかなければならない。リピーターを増やす為には、日本もフラワーウォッチのコンサルタント業務が成り立つようにする。それ位、花保ちを重点に考えてやっていきたい。フラワーウォッチのコンサルタント業務が忙しくなるそのレベルまで、花き業界はお客様に対して、咲ききること、花保ちの責任を持たなければならない。また、日本の花き業界のような、物日と平常時の需要の差が甚だしい業界では、適切な貯蔵が必要となる。「時間×温度」の数値をミニマイズするよう徹底しなければならない。

 12月19日のコラムでもお伝えしたように、私は流通プロセスで水揚げをした花を信じている訳では無い。かつて、どの花屋さんにもキーパーがあったが、キーパーの花を信じていなかったのと同様、今、プロとして水揚げの花も信じるという訳にはいかなくなったのだ。どこでその花のシェルライフを信じれば良いのか。普通の人が見たのでは、外観からは咲ききるか、そのままで終わってしまうのか、また、生きが良いのか悪いのか分からない。そこを、「時間×温度」でプロの業者間で数値を共有する。そして、後は小売店に任せて販売してもらう。こういった科学に基づいた仕事の仕方をしていく必要があると思う。これはほんの一例だが、サプライチェーンマネジメントの内、物流、鮮度管理を行うのも、卸売会社の役割の一つだと思うのだが如何だろうか。この面からも、卸売市場が花き流通の中で役立っていけると思うのである。


投稿者 磯村信夫 : 12:32