社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年01月30日

現実主義の立場に立つと大切なのは物流、そして多数の現物を評価する目


 今日の日本経済新聞の社説にも、東京オリンピックで使われる食材はサステイナビリティを一つの条件にしているグローバルGAPを批准しているものでないと使用されない。したがって、早くグローバルGAPを批准してほしいと、主として農業者に呼びかけていた。

 ロンドンオリンピックから花もグローバルGAP。花の場合、オランダの認定機関MPSのものを批准していないと花でも使われないことになっていた。それゆえ、北京オリンピックの時には、オランダは中国政府に働きかけをし、MPSの基準に合う花を生産者に作ってもらうなど助成をしていた。去年のリオオリンピックは、食品はグローバルGAPを批准していないといけなかったが花は使われなかったので、もう一度MPS本部にオリンピックの花はグローバルGAPを批准したもの、すなわちMPS-GAPが必要かどうか再確認をしている。というのも、日本はJASやらJ-GAPの規格を作ろうとしているからだ。しかし、そこにはグローバルGAPが条件にしているいくつものサステイナビリティの条件が入っていない。そこに働く者の労働条件や環境配慮なども含め、基準を決めているのがグローバルGAPである。

 さて、その辺のことを含め先週、花以外の卸売会社と会合をもった。その時、魚の卸の経営者が「農業改革は良いがそのおかげで卸売市場が混乱するのは困る。全農改革もわかった。そういうこともあるかもしれない。だが、魚の卸売市場は、浜の卸売市場、消費地の卸売市場が必要でいずれも役に立っている。」と話していた。生鮮食料品のスムーズな流通を現実的に見た時、たくさんの種類のものが量的にも集まり、たくさんの人がそこで取引し物流する。その「たくさんの」ということが現実的に大切だ。そして、サッと鮮度良く持って帰って消費者に届ける準備をする。

 バーチャルには情報取引で済むが、現実にはスピーディな物流が必要なだけでなく、物を比べてみて評価するということが必要なのだ。困ったことだが、国も業界も個人もネットで市場取引ができると思っている。できなくはないが、ネット取引の条件は返品を認めることだ。返品されたものは腐る。だから、大切なのは多種多様な現物を比べることであり、手間いらずのネット取引をしても、結局卸売市場が繁栄することはない。もちろん情報取引が効率的なのはわかる。

 情報が世の中に錯綜すればするほど頑張っている会社は現実を直視し、現時点では物流を本格化する。物流で勝つことを行おうとしている。取扱商品が腐りやすい生鮮食料品花きの場合、物流だけでは不足で、いくらICTやAIなどの発達あるいは第四次産業革命であっても、現物・現場・現実の三現主義で仕事をしていくことがお取引先や社会の人々に幸せになってもらうためには必要である。理想を持つことは必要だが、現実はいつも相対的なものだ。少しでも良くすること、そのためには現実を見ようとするため、現物と現場をきちんと見立てることが必要なのである。その意味で、現物主義の卸売市場が物流を最も大切なものとして生きていこうとしているが、今後卸売市場をサプライチェーンのオルガナイザーとして作り上げていくことが必要だと思われる。産地で品物が足りないのであれば、同盟関係の中核市場から品揃えを手伝ってもらい、地元の小売店、消費者へ荷をつなげることが大切だ。

 このような意見を私は持っているが、皆様方のご意見はいかがだろうか。大切なのは地域の人たちを幸せにするには生鮮食料品花きの卸売市場がどうしても必要だということである。市場数は少なくなっていくだろうが、不要というわけではないのである。その纏まり方をどのようにすべきか、今後の業界内の議論となる。


P.S.
今国会に農業関連法案8本が提出されているが、具体的な審議は4月頃になるのではないかと推測している(可決は5~6月)。4月審議の時に、なぜ卸売市場についての法案を積み残したかという審議が必ずあるだろう。そうなると、4月までのうちに卸売市場についての考えを農林水産省は固めておかなければならない。この2月くらいから抜本的改革をするとされた卸売市場がどういった姿か議論しなければならないはずだ。


投稿者 磯村信夫 : 16:21