社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年08月21日

バラよ相場のリーダーシップを取れ


 8月19日(土)、「第27回大田花きバラ会議」が開催された。今年はバラ切花の営利栽培が始まって100年だ。この記念すべき年、バラ切花が名実ともに日本の切花業界を引っ張っていく年にしていきたい。圧倒的に国民の支持を得ているバラは、いまだ“需要”に未開拓な分野がある。そこに切り込めば、消費拡大も期待できる。このような内容の会議であった。

 ここで、白菊の安値から1月余り相場が低迷した2月4月7月を反省し、一輪菊の相場の影響を受けにくいセリ順を、大田花きでは実行している。菊の中で、圧倒的に幅広い年代層から支持されているSP菊とディスバッド菊は、従来の仏事需要、或いは、和風のイメージの輪菊と同様、その日の相場を決めるものだ。現在の大田花きのセリは、セリ人の挨拶と共に一斉にセリが開始され、A・BセリでSP菊、Cセリでトルコギキョウ、Dセリでディスバッド菊、E・Fセリで一輪菊、Gセリでバラ、Hセリでナチュラル志向の枝物を、まず始めに競り始める(※平成29年8月のセリ順)。例えば、本日であれば、20日“悩み”で、月遅れのお盆が終わったばかりだから仏事関係は安い。しかし、夏休みが終わり「フラワービズ」でオフィスや受付、飲食店に花や緑を飾る。あるいは、家庭の中に花を飾るお客さんが見込まれ、店頭では、とりわけ東京は涼しいから、少し秋めいた色合いの物や、山野草のような物が売れている。需要動向は想定の範囲内で動いており、こうした需要を意識したセリの順番を常に考えている。

 先週のコラムで掲載したように、日本の花市場の相場は、大品目が安いと、切花も鉢物も全面安になってしまうことがある。反対に、大品目が高いと、全体が高くなりがちになる。特に切花の場合、白菊に影響を受けやすい。では、白菊が使われる葬儀でも、装飾でラインを生かせる大きめの葬儀はどの位あるだろうか。2015年の死亡者数は130万人で、葬儀をするのは全体の約95%、そして、一件当たりの葬儀単価は、2014年で約144万円。そのうち、花が占める金額は約12%。従って、約2,000億円が葬儀花のマーケットサイズのようだ。8月15日の戦没者慰霊を見ても、一輪菊は白も黄色も、大きな会場でラインを出すのに欠かせない。しかし、「息子たちに迷惑をかけたくない」と、小さな葬儀を望む人が増えてきている。この2,000億円の需要の中で、大きな会場でラインを出す為の仕事菊は余ることが、2015年から出てきて、今年に入り、7月までの間で3ヶ月も需給バランスを崩した。

 一方、結婚式は、年間約60万組が結婚するが、そのうち式を挙げるのは約30万組。結婚披露宴の単価は2015年で葬儀の倍の約300万円。式にかける花代は、葬 儀の半分の約6%。そうすると、600億円弱の花のマーケットサイズになる。結婚式の件数自体は減っているが、式の大きさは二極化している。平均した客単価は、今の子どもの教育費等を見てみても少なくはならない。だからホテルも、また式場を改築したりしている。

 バラのチャンスは、結婚式から葬儀の花まで、トルコギキョウ同様、打って出ることが出来る点だ。さらに今後、産地表示を、あるいは、生産者名を積極的にアピールすることによって、花持ちが抜群に良くなっているバラ切花は、スーパーでも重要なアイテムになってくる。これだけ花持ちが良ければ、ワインと同様、花束の中心価格帯を1,500~800円にすることが出来る。そして、これをしっかり売ることが出来れば、既に成功している、とあるスーパーマーケットの花売り場の様に、店の売上の少なくとも3%近くが花の売上になっていくのだ。その目玉はバラで、しかも国産のバラであることが好ましいと、スーパーの経営者は考えている。

 生産流通をどう取り組んでいくか。手軽なバラを、ケニアやエチオピアだけに任せておいて良いのか。すっかり若い世代にバトンタッチされた切バラ生産業界が、一本単価が高い冠婚葬祭マーケット需要狙いだけでなく、一般小売のホームユース用のバラを作っても、十分に儲かる仕組みを作っていかなければならない。それが出来た時、バラの売上金額シェアは切花の25%を占めるようになるのである。この百周年を機に、バラをもう一度見直して、確実にホームユースに繋げてもらいたい。そして、日本中の花市場は、仏事の物日ばかりに頼ることなく、小売店と一緒になって、オフィスと家庭で花を楽しんでもらうべく消費創造活動を行うべきだ。また、日々の市況については、各品目品種が需要に即した相場展開が出来るよう、セリ改革、セリ前取引改革を行って欲しい。





投稿者 磯村信夫 : 16:12