社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年02月27日

まず設備投資を行う


 (一社)日本切花輸出入協会会長の(株)クラシック西尾社長は、「これ以上、国内花き生産を落としてはならない。流通量が減るということは、需要が減ることとイコールだからだ。微力ながら、その為に良い花を輸入して卸売市場に出荷していきたい」。こう、花き業界全体のことを考え、自分の輸入切花ビジネスを振り返っていらっしゃった。そのクラシックさんが、成田に大きな低温管理施設を新たに借りられた。

 ウィークエンドフラワーやフラワービズ等の需要が拡大するには、更なる団塊ジュニアの方へのマーケティング活動が必要だ。そういえば、本年のフラワーバレンタインだが、(一社)花の国日本協議会に寄せられた報告によると、団塊ジュニアの方へ焦点を合わせた店づくり、フラワーバレンタインのプロモーション活動をした花屋さんは、前年同日比約120%の売上実績を確保したところもあるようだ。フラワーバレンタインデーのプロモーションを行えば売上が上がるようになってきているので、愛妻の日からはじまって、フラワーバレンタインデー、ホワイトデーの“愛の三部作”を取り組んでいく必要がある。

 話を戻すが、西尾社長が低温管理施設をお借りになったのは、花の購入場所の量販店におけるウェイトが、増してきているからだ。ご高齢の人がメインのお客様になっている現在の花き業界からすると、仏事の物日と平常の商い金額の差は、ますます拡大している。こういう需要の格差にも応えようとしているのだ。

 私ども大田花きも同様で、物日でもパンクしない、定温機能付きの施設が必要だと思った。これは、花き業界を次のステップへ、すなわち、生活者にとって花を更に身近な物にしていく一過程として必要なことだ。クラシックさんやワイエムエスさん等の輸入商社さんと一緒に花き業界を歩んできたが、ワイエムエスさんの外国産地の定温施設、そして、空港までの鮮度保持ロジスティック、さらに、国内に着いてからの鮮度保持のための様々な施策等、学ぶべきものが多い。

 申し上げたいのは、我々卸売市場は、可能な限り品質を落とさない鮮度保持努力が必要だということ、また、新しい卸売市場の機能として、鮮度保持貯蔵の倉庫業の仕事が急務だということだ。これは、花は鮮魚と同様に生鮮品だからだ。さらに、生産地と運送会社に、鮮度保持に対する投資を積極的に促していくことも必要だ。これは、市場の中でも、産地とお付き合いの深い仲卸がしても良いだろう。

 農業競争力強化の具体策を実行する前に、まず、切花・鉢物も具体的なプロとしての鮮度保持対策と、それに向けた設備投資をする。さもないと、結局、一週間花が持たなかったり、きれいに咲かなかったり、品質が販売対価に見合わない場合がある。つまり、費用対効果が低く、何か損をした気分になる。だから結局買わない。このようなサイクルになってしまわぬよう、温度・水分・光の管理を、生産から産地集出荷場、請け負うトラック会社、卸、仲卸、小売りまで、まず、投資をすべきである。

 仏花需要に頼ってきた花き業界。母の日を除き、30年前の商品群に寄りかかってきた鉢物業界。20年前のガーデニングブーム以来、苦戦しているガーデニング・苗物業界。今こそ、30、40歳代に消費ターゲットを移し、生産流通の主たる品目を変え、設備投資を行っていく。そうでなければ、消費者が結局、適切な価格よりも高いものを買ってしまう。そして、需要は縮小する。これでは、我々花き業界は責任を果たせない。消費者の為に、納得のいく設備投資をしていってもらいたい。


投稿者 磯村信夫 : 17:27