フラワー・オブ・ザ・イヤー・OTA FLOWER Of THE YEAR OTA

大田花きでは、優れた花きの出荷を奨励し、一層の品質向上を促すと共に、流行の指標づくりを行うことを目的とし、魅力ある花を作出された生産者の方へ、その功積を称え「FLOWER OF THE YEAR OTA」として表彰しています。同時にこの賞は、流行を定点観測の上、データベースとして蓄積し、今後の人気潮流を占うものでもあります。


2016年度


(株)大田花き花の生活研究所が持つ各種データを元に、産地別品種をノミネートした上で花業界でご活躍されている方々を審査員としてお迎えし、より客観的な選考を行っております。また、(株)大田花き花の生活研究所では、この結果を元に、花の流行分析を行っています。


●FLOWER OF THE YEAR OTA2016最優秀賞


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品目: トルコギキョウ 品種: NFアンティークピンク
産地名: 鈴木 明典 様(静岡県)


■産地様のコメント

 名誉ある賞をいただき、大変ありがとうございます。トルコギキョウを作り始めて早15年ほど、毎年新しい品種たちが登場し、品種選定が大変です。品種の能力を引き出し、魅力ある花を咲かせるよう努力してまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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【所感】

 NFとは、この品種を育種された長野県千曲市の育種家・中曽根健(なかそね・けん)様の品種でフリンジの利いたもの、つまり「中曽根フリンジ」の頭文字をとったものです。アンティークピンクとフリンジが柔らかく優しい雰囲気を醸し出していますが、メタリックのような光沢感を放ち、どこかシャープな魅力も併せ持ちます。品種の評価が高いばかりでなく、主茎がしっかりとしていて花弁が締まり、生産技術に対する評価も最上級。ブレない品質は最優秀賞に値する納得のご受賞です。
 地道に生産に打ちこまれ、国内有数のトルコギキョウ生産者様として名を連ねながらも、謙虚で朴訥とした鈴木様のお人柄も共感を呼びます。出荷期は11月から6月。中でも最も美しさが引き立つピークは3月です。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 特別賞


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品目: スプレーマム 品種: カリメロシリーズ
産地名: 株式会社 グリーンウイングスジャパン 様(東京:ベトナム産)


■出荷者様のコメント

 この度は賞を賜り誠にありがとうございます。たくさんのお客様に認めていただき、大変光栄に存じます。このカリメロは弊社の兄弟会社であるベトナムダラットハスファームで栽培したものを、弊社が輸入して国内のマーケットにご紹介しております。この商品開発の発端はお客様のアドバイスにありました。「サンティニのポンポンタイプがあれば和花ばかりでなく、洋花としても需要が伸びる」というものでした。その後ハスファームにおいて様々なポンポンタイプのサンティニを試作し、オランダのフロリテック社が持つ「カリメロ」に行き着きました。これからもお客様にご教示いただきながら、お役に立てる、そして再び褒めていただけるよう商品開発に努めます。

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【所感】

 2005年に始まったフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA史上、輸入商社様のご受賞は初めてです。グリーンウイングスジャパン様のカリメロはベトナムのダラットという花き名産地で生産されていますが、ベトナムで日本向け花きの生産が盛んになった象徴といえるでしょう。
カリメロは小輪で、花付き、草姿のバランスも良く、またグリーンウイングスジャパン様の上手なプロモーションもあり、広く認知され、多くの人に好まれる品種となりました。かわいらしさと使いやすさを兼ね備え、どのようなシーンでも重宝されています。洋花としても多用してできるよう開発したというグリーンウイングスジャパン様の目論見通りの評価を得ています。カリメロは全部で9品種展開。周年出荷がございます。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 特別賞


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品目: チューリップ 品種: マリット
産地名: 株式会社 センティア 様(富山県)


■産地様のコメント

 名誉ある賞をいただきましてありがとうございます。私どもは数多くの特殊品種を生産しておりますが、それらの品種の中から一重のオーソドックスな形のチューリップで受賞できたのは、大変感慨深くもあり、純粋に喜んでいます。一重のチューリップがこの賞を受賞したことで、私どもだけでなく、全国のチューリップ生産者がもっと魅力ある次世代型の一重を自信を持ってご提供できるきっかけになればチューリップはもっと盛り上がるような気がします。気合を入れていきましょう!

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【所感】

 チューリップらしい花型の一重、春の訪れと明るい未来を感じさせるイエローオレンジの色目が評価されました。最終選考委員からは、どの店舗でも常に良く売れたというコメントを頂戴しております。つまり消費者に支持されたということです。今やチューリップは八重咲き、フリンジ咲き、エレガントなパロット咲き、ピクチャーシリーズのようなキンチャク咲きなど、多様な品種が展開されていますが、もしかするとこのマリットはチューリップの新しい評価軸を作っていくかもしれません。出荷期は1月上旬-3月下旬。



●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 新商品奨励賞


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品目: オリエンタルユリ 品種: ゼルミラ
産地名: にいがた岩船農協 切花部会荒川支部 様(新潟県)


■産地様のコメント

日頃より「あらかわのユリ」をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。また、このような賞を頂きありがとうございます。当産地は発足して30年近くになり、現在生産者8名で周年出荷をしております。1年に2階新品種の試験栽培を含め、100品種以上の取り扱いをしております。今後とも品質・量ともに安定した出荷をしてまいりますので、「あらかわのユリ」をよろしくお願いいたします。

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【所感】

 ゼルミラはOTハイブリッドで大輪に咲き、トランペットリリーの血を引いて艶のある明るいオレンジ色が叶った素晴らしい品種です。にいがた岩船農協切花部会荒川支部様のゼルミラは花弁が肉厚で、光沢感があり、迫力の逸品。1本に4輪付き、全てが大輪に開花し、圧倒的な存在感を放ちます。
 ゼルミラとは、聴き慣れないカタカナの羅列のようですが、実はイタリアの作曲家ロッシーニが書いたオペラ「ゼルミーラ」に由来します。出荷期の旬は6月、及び10月。




●FLOWER OF THE YEAR OTA2016 新商品奨励賞


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品目: スミレ 品種: ミュール
産地名: みやび花園 様(群馬県)


■産地様のコメント

 パンジーを切り花として生産するという発想に出合ったのは平成元年のころ。とても感動的な出合いでした。その魅力にひかれ、試行錯誤を重ね、切り花として利用できそうな品種を海外から入れたり、選抜を繰り返しながら8年前に「カルメン」という大輪フリル咲きのイエロー・ピンク・ホワイト乗ミックスが誕生しました。今回受賞となったミュールは、サカタのタネの品種ですが、本来ガーデン用に育種された品種ですので、切花利用に至るまで数年工夫にわたり重ねてきました。この品種は非常に花持ちが良く、フリルが強く、とてもかわいく、使いやすいです。私たちが長年取り組んできたことに対し、このように評価していただいたことをとても有難く思います。今後ともスタッフ一同精進してまいりたいと思います。

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【所感】

 パンジーが切花として評価されるというのは画期的です。フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA史上、切花パンジーが受賞するのは初めてです。ほんの数年前では想像しがたかったことを考えれば、新しい時代の到来といってもいいかもしれません。
 小さな花壇苗のパンジーを切花として出荷するとは、斬新なアイディアです。商品化するには様々なご苦労があったこととお察しします。その道を切り拓いていらしたみやび花園様だからこそ、その日持ちも品質も別格。3-4週間の花持ちを誇ります。みやび花園様の花き生産に対するスピリットの表れといってもいいでしょう。出荷期間は1月半ばから3月です。




【トレンド分析】

今年のフラワートレンドの特徴は、新しいキーワードが2つと従来までのキーワードが引き続き、次の3つの軸が見えてきます。

1.自然な草花
 都市化が進み生活者マインドは自然への回帰傾向が進む中、野趣溢れるナチュラルな植物を求め、草花ニュアンスなものを求める傾向は引き続き見られ、小輪系や野趣溢れるアイテムが注目を集めています。小輪のスプレーマム‘カリメロ’やパンジー‘ミュール’、一重のチューリップ‘マリット’などがこれにあたります。

2.未来への期待感
 チューリップやオリエンタルユリなどから受賞品種が選ばれたことは、買参人さまや実需者のみなさまのこれらの品目に対する未来への期待感が込められているといえます。オリエンタルユリには珍しいサーモンピンク色の‘ゼルミラ’、チューリップの‘マリット’、いずれも大変明るい色目の品種で、店頭での動きは良く、最終選考ではかなり高い評価でした。

3.アンティークカラー&フリンジ咲き
 セピアトーンのアンティークカラーとフリンジ咲きはここ数年来、最も人気の王道品種です。トルコギキョウのNFアンティークピンクやパンジーのミュールなどがこれにあたります。とりわけNFアンティークピンクは、柔らかい曲線のフリンジが多用され、優しい雰囲気を持ちながらも、その立ち姿は凛として、花弁の光沢感からはメタリックのような鋭い輝きさえも見られます。この品種が最優秀賞に選ばれたということは、花が優しさや守られるものの象徴であるばかりではなく、社会を変えていこうという前向き感や生活者の強さを反映したメタファーと捉えることができます。

 フラワー・オブ・ザ・イヤーOTAの結果は、その選出方法から常に社会や生活者マインドを反映します。自然な草花や未来への期待感を表現する明るい色目は、2017年、さらにあらゆる形で生活シーンに浸透していくことでしょう。

<文責>株式会社 大田花き花の生活研究所


2016年12月03日